2019年6月
インドの北部、ヒマラヤの山々を見上げる標高約2050mに位置するのどかな山間のバシスト村です。
ここから先のインドの秘境スピティ谷に行くためにやって来たのに、なんと肝心の(スピティ谷へ行く)道路がまだ開通していませんでした。うー-んまさかの事態。仕方ないので道路開通まで高度順応も兼ねてバシスト村に滞在することにしました。
バシスト村ってどんなとこ?
周囲を山々に囲まれたバシスト村は迷路のように小道が入り組み、乳牛を飼う素朴な家々やゲストハウスが並び、その隙間を埋めるように小さなオレンジ色の玉をたわわに実らせたあんずの木があちこちで風に揺れています。
山の斜面にはバシスト村の名物のリンゴの果樹園がなだらかに広がっていました。
バシスト村はリンゴの産地で、リンゴジュースや発泡酒が美味しいらしいです。
真夏でも雪をかぶる高い山々に囲まれたバシスト村はトレッキングの拠点に滞在する人が多く、室料がそれほど高くないので1か月単位で借りて1週間トレッキングに出かけて戻ってきて、また別のコースに1週間トレッキングに行って・・と、アクティブにバカンスを過ごす人が多い印象でした。
バシスト村の旅行会社には9日間だったか10日間の日程で6000m越えの山を登るトレッキングツアーの募集が掲示されていました。旅行会社の人に誘われたけど「標高高すぎてダメだよ」といったら「数日かけてゆっくり登って行くから大丈夫だよ」とのことでした。ほんとに大丈夫なのかなぁ?行かなかったけど。
デリーが真夏の45℃の酷暑の時期でも、ここは爽やかな高原の風が吹く25℃なんてあたりまえの桃源郷のような村です。夏場なのに朝は10℃くらいに冷え込んだりもしました。
バシスト村の人々
この村の人々はヒンズー教徒がメインのようですが、これまで通って来たバラナシやビジャープルなどの人々とは雰囲気がだいぶ違ってました。なんというか、男性が全体的にマイルドで穏やかななんです。男性たちは丸い円柱のかわいらしい帽子をかぶって、その帽子に花をあしらったりしていました。こういう「カワイイ」がマイルドに見えるのかも。
女性陣は頭にギュっとスカーフを巻いている人が多いです。働き者の女性が多く元気で朗らかで喜怒哀楽がハッキリして言いたいことはズバズバ言って楽しいときは盛大に笑う「肝っ玉母ちゃん」多し。
このバイタリティー溢れる女性陣の光景はどこかで見たことあるなぁと思っていたら(そうか、宮崎駿の紅の豚に出て来たピッコロ工場の女性たちだ)と思いました。
バシスト村の見事な木造寺院
村の中心にはヒンズー教の寺院がいくつかありました。
バシスト村らしく木材で作られた寺院です。
この木造寺院の木彫りの装飾が凄いんですよ。
これはぜひ現地で生で見ていただきたいです。(さらに寺院には凄いものがあるんですがそれは後ほど)
離れて見るとまるで日本の御柱のような大きな柱が囲んでいました。何か意味があるのかな?勝手に「インドの御柱」と呼んでました。
寺院の入口に謎の物体が。よく見たら油?のようなものに焦げて薄っすらと笑みを浮かべる人型が浸かってる。何かの儀式かなぁ?ちょっと怖い。
寺院で毎朝小さな貝殻の笛をプゥプゥ鳴らしながら祈りを捧げていたサドゥのおじちゃん。バラナシの威圧的で金の亡者なサドゥとは全然違って、とーっても穏やかで優しいおじちゃん。最初はバラナシの強欲サドゥの印象が強くて「ナマステー」と挨拶されても逃げてたけど(おじちゃんゴメン)、思い切って寄ってみたらとても優しい穏やかな方でした。会うと必ず「ナマステー」と手招きしてお菓子やフルーツをくれました。
バシスト村に湧く日本人好みのちょっと熱めの温泉
なんとバシスト村の寺院には温泉浴室があるのです。ちょっと熱めのタマゴ臭の香る温泉がじゃんじゃん湧いていて、男女別浴場で誰でも浸かることができるという。寺院内には女性用の内湯、寺院の外には男性用露天風呂がありました。
滞在中はこの温泉の朝風呂に毎日欠かさず通いました。まさか、まさか、インドでこんな本格的な温泉に浸かれるとは・・・あーシアワセ。落ち着きのない私たちがスピティ谷への道路開通を待ってみようかと思った決定打はこの温泉の存在でした。
バシスト村温泉の詳しいレポはこちらをどうぞ。
温泉利用の洗濯場
バシスト村には温泉を垂れ流す洗濯場もあります。
浴場と同じちょっと熱めのタマゴ臭香る湯がジャバジャバ垂れ流されています。村の人はここで洗濯したり、食器を洗ったり、バケツに汲んで持って帰ったりしていました。
温泉で牛様も洗います。
下にある石は最初(洗濯にでも使うのかな?)なんて思っていたら、そうではなくて湯の着地点の少し手前に置くと周囲にお湯がはねるのを防ぐと教えてもらいました。なかなかうまく考えたなー。
三昧(男)がひとりで洗濯に行くとオバちゃんたちに「重い荷物をあそこまで運べ」とか「これを手伝え」とか挙句に「お前は洗うの遅いからどけ」とか言われるらしく、部屋に帰って来るたびに「この村はふてぶてしいババアばっかりだ」とブツブツ言ってました。私が行くと全然そんなことないのになぁ。もしかしたら東アジア系の男性が珍しくてオバちゃん達にいじられるのかも。
バシスト村の生き物たち
バシスト村の動物たちといえば何と言っても牛様です。
牛様を家の一階で飼育しているお宅が多く、天気のいい日は外にも出していました。
牛様大移動。昼間はちょっとした牧場のような所に連れて行ったりもしていて、村の細い小道を牛様が移動する姿がよくみられました。
お馬さん達は山の上の工事現場を一日に何度も往復していました。
こちらはフワッフワのウサギを持たせて有料記念撮影のウサギおばちゃん。お客さんのターゲットはインド人の若いお嬢さん達です。見ていると強引な売り込みは無く、フワフワの白うさぎを見せると向こうから「わぁ」と釣られてました。そうか・・・インドの若いお嬢さん達の気を惹くには白いウサギかぁ。どの人も同じ金額払ってたので料金は一律のようです。
ウサギおばちゃんはちょっと仕事をするとすぐにウサギを寺院の裏などの人のいないところに連れて行って休ませていました。そして籠や膝に乗せて優しい眼差しでウサギを見て何か話しかけたりしてるんです。商売に使ってはいるけれど、ウサギがとても好きな人たちなんだと思いました。
頭が河童みたいなお皿模様のへんな鳥もいました。日本のオナガにちょっと似てる。
なかなかボリュームのあるトカゲもいました。「珍しい、珍しい」と喜んで写真撮ってたら村では害獣みたいで、トカゲ避けの薬剤が売られていました。
猫もいます。
かわいいワンコたちもいます。
お猿さんもいました。「標高の高いバシスト村にはまさかいないだろうなぁ」と思っていたら、ゲストハウスの廊下のゴミが荒らされたんで(まさか・・)と用心していたらやっぱりいました。屋上で干しているトウモロコシか何かの皮を食べてる。
バシスト村は食堂やカフェや雑貨店が充実
山間の小さな村ですが、周囲の山々へのトレッキング拠点でもあり、長期滞在する観光客に加えて昼間は日帰りのインド人観光客で賑わうので、村の中心地には観光客向きの食堂や雑貨店が並び滞在するのにまったく不自由はありませんでした。
フルーツを売る店ではちょうどシーズンなのかプラムが売られていました。
プラムがおいしくて滞在中は50個くらい食べたかなぁ。
食堂も充実。同じインドの観光地でもお客さんがインド人主流だとマサラ系の食堂とローカルなチャイ屋さんばっかりなことが多いんですが、欧米からの観光客が多い場所はピザや焼きたてパン、マシンでいれたコーヒーなど彼らの好みそうなものが取り揃っています。ただ欧米系のお客さんが集まるとハッパとかよろしくない面も見え隠れしますが、食事に関してはマサラ縛りから解放されるのでちょっと助かる。
特に嬉しかったのはチベットのうどん「トゥクパ」を出す店が数件あって各店を食べ歩きできたこと。気に入って何度か行ったのが、共同の洗濯場斜め向かいにあるこちら。
だいたいどこの店もそうなんですが、注文するとその場で麺を作って調理して出してくれます。三昧のちょっかいをかわしつつ麺を作るお兄ちゃん。
ボス(女将さん)登場。お兄ちゃんも三昧もビビって途端に無口に。
てんこ盛りに出してくれるので食べるのがちょっと大変。でも嬉しい。
こちらのお店は寺院広場から下へ降りる坂道の途中にあるパン?ケーキ?屋さん。
持ち帰りもできるケーキやビスケットとコーヒーでよく一休みさせていただきました。
このパン屋さんの隣にはATMがあって普通に稼働しててビックリ。インドのちょっと田舎に行くとATMが稼働していないことが多いんですよ。山の中の小さな村のATMが普通に稼働してるなんて奇跡ですよ。※今回がたまたま稼働していただけかもしれないので、念のためマナリ中心地でお金を調達してから訪問されることをおすすめします。
寺院広場にも欧米人の好みそうなカフェがあるんですが、あの辺りはスモーク(ハッパ)やる人も多くて、けだるく漂う「やさぐれ感」が苦手であまり近寄らずでした。
大麻草で有名なマナリ
バシスト村・・・というよりマナリ一帯は大麻草でも有名だったということを訪問して知りました。それまで何も知らずだったんですが、バシスト村の細い小道に入ると「チャラス」と声をかけられるんです。「チャラス」って最初なんのことかわからなくて「ん?ちゃらす??ハローって意味?」と聞き返したら、苦笑いされながら「チョコレート、はっぱ、はっぱ、スモーク、スモーク」とタバコを吸うジェスチャーを交えながら言ったので(なるほど、チャラスというのは大麻のことなんだ)とわかりました。
バラナシやハンピの中でも特にチャラいバックパッカーが集まる地区ではあった光景ですが、バシスト村のようなトレッカーやファミリー観光客も多い爽やかな村でまさか「大麻」の勧誘に会うとはちょっと驚きました。
その後マナリ周辺の山間部は良質な大麻草が採れるということで世界各国から愛好家が集まる「大麻草の聖地」だということを知りました。
こっちは大麻草には一切興味なく、雄大なヒマラヤマの山々を眺めながら温泉に浸かってゆっくりしたいのに、勧誘の声を掛けられると気分は一気に台無しで、それがバシスト村の唯一の残念でした。
ただ滞在するうちに、声を掛けられやすい場所や逆に大麻禁止のゲストハウス敷地内であればほとんど声を掛けられないということがわかってきました。バシスト村(マナリもかな?)では宿泊するゲストハウス選びはかなり重要です。
マナリから行く山間の温泉地マニカランの近くにも大麻草が有名な町があったらしいですが、マニカランでは一度も声をかけられませんでした。ちゃらいバックパッカーがぜんぜんいなかったのが大きいかも。