はじめてのウズベキスタン鉄道・寝台列車(ヒヴァからタシュケントへ)

2019年8月30日-31日

真新しいヒヴァ駅からタシュケント行きウズベキスタン鉄道の寝台列車にいよいよ乗り込みます(ワクワク)。

前回の記事(チケット購入とヒヴァ駅VIPルーム)

 

列車は何両も連なり、駅のホームも湾曲しているので端から端まで見渡せない…。

これまで2回乗ったウズベキスタンの昼間の列車は、高速鉄道アフラシャブ号も普通列車も新しく快適だったけれど、この寝台列車はかなり年季が入ってる。それがまた雰囲気あって良い。

 

ようやく辿り着いた先頭車両。

 

「写真OK?」のジェスチャーをすると、運転手さんがポーズを決めて、短い汽笛をピッピッと2回鳴らしてくれました。

 

ファーストクラスの客室

いよいよ乗車します。乗車前には車掌さんによるチケットの確認。そのままチケットは回収されましたが、後で返してもらえるのかなぁ?

当時のウズベキスタンは、出国時に滞在日数分の宿泊場所を証明する書類が必要というクソ面倒な決まりがあったので、チケットを返してもらえないと凄く困る。→翌朝、車掌さんが座席まで返しに来ました。ちなみにウズベキスタンのこの面倒くさい書類提出は、その後に廃止されたようです。

 

車内が暑い。停車中でエアコンが止まっているからか、なんとも暑っ苦しい。

 

こちらがファーストクラスの客室です。画像ではシングルベッドが2台だけに見えますが、二段ベッドです。ひとつの部屋で最大4人利用できるコンパ―トメントタイプです。

客室に扉はあるものの、各ベッドにカーテンはありません。同室になった乗客同士のプライベートは無い、ベトナムの統一鉄道やインド国鉄と同じスタイルです。

 

下段ベッドを跳ね上げるとこんな感じ。同じ車両にいた何故か上半身裸のウズベキスタン男性が、ベッドの跳ね上げ方を教えてくれました。

跳ね上げたベッドの下に見える長方形の箱が荷物置き場です。下段ベッドの荷物置き場はベッドそのものが蓋になり、こうしてベッドを跳ね上げないと荷物を取り出せない造りになっていました。寝ている間に荷物を盗られる心配が無く、これはうまく考えたなぁと思いました。

 

お次は上段です。暗くて見えにくいですが…。

 

上段を跳ね上げるとこんな感じ。

上段を跳ね上げる理由は、就寝以外の時間は下段を椅子として使用するため天井部を高くする、というのがよくあるパターン。

 

身長173センチの三昧が上段部であぐらをかいた様子。

ですが、今回利用した寝台列車のファーストクラスは、下段・上段共に天井が高めで、身長180cmくらいまでなら座っても頭が当たらない感じ。乗客が全員それ以下の身長なら、跳ね上げなくても大丈夫なんじやないかな?と思いました。

 

縦幅はやや短めで、158cmで丁度足を伸ばして寝られるくらい。それ以上だと足を曲げる形になります。

 

上段の荷物スペースです。下段と比べてかなりオープンですが、高さがあるので、まぁまぁ盗られにくい…かな?

画像では40リットルのバックパックをひとつ入れてますが、それでもまだまだ余裕があります。

 

寝具は落ち着いた焦げ茶色にキラキラと光る模様が入り、ウズベキスタンらしい雰囲気満点。枕は四角く大きくズッシリと重いウズベキスタンスタイルでした。

就寝前には枕カバーと、シーツなのか上掛けなのか、個包装された清潔な布を車掌さんが配りに来ました。

 

上段より下段が良かった…

今回私達は二人とも上段を予約したんですが、コレがめちゃめちゃ上りにくい。

下段ベッドの壁に折り畳み式の足場があるんですが、これがかなり使いずらいんです。最初だけ使って、後は腕の力だけで上り下りしてました。

その他の理由も含め、次に乗車する機会があったら、下段にしようと思いました。

下段の方が良いと思った理由

  • 下段の方がベッドに腰掛けて椅子のように寛げる。
  • テーブルが使える。窓の景色も眺められる。(上段は窓のスペースが少しだけ)
  • 大きく重い荷物を足元の箱にしまえる
  • 上り下りしなくていい

まぁ下段を利用していないんで、実際に使ってみたら「アレダメ、コレダメ」が出てくるのかも。隣の芝生は青く見えるってやつです。

車内の充電は廊下で

電源は廊下で充電することができました。

完全に扉を閉めるコンパートメントタイプなんで「タブレットを目の届かない廊下に放置するのもなんだかなぁ」とも思いましたが、他の乗客が普通にやってるし、まぁウズベキスタンなら大丈夫かな?と、放置しました。

ウズベキスタン人はかなり防犯意識は薄いようで、ベッドの上に普通にカバンや財布を放置していなくなるとか、食堂の場所取りでテーブルにスマホを置きっぱなしにするとか、日本でもあまり見ない平和ボケな光景が多々見られました。

エコノミークラスも拝見

せっかくなんでエコノミークラスの車両も見てみました。インドでも見かけたオープンサロンな造りで、おばちゃん達を中心に皆でワイワイ賑やかな雰囲気でした。次に乗る機会があればエコノミークラスがいいかなぁ。

 

長い汽笛が出発の合図です。それを聞いてホームのあちこちに散らばっていた乗客が車両に乗り込みました。

 

エアコン復活ならず(暑い)

ヒヴァ駅をほぼ定刻通りに出発すると、たちまち車窓はのどかな田園風景になります。

しばらく走るとコンパートメント天井のエアコン(?)吹き出し口から冷風が流れ、ようやく暑さが和らぎました。…と思ったら一時間ほどで止まってしまい、また蒸し風呂状態に。その後、エアコンの冷風は二度と復活ならず。

車両の給湯場とトイレ

車両には給水場、熱湯の出る給湯場もありました。乗客のお婆ちゃん達はそれを知っていたらしく、自前の急須や茶葉を持ち込む用意の良さです。

 

トイレは洋式ですが、古く長年染みついた汚れも目立ち、腰掛けるには躊躇する感じです。トイレットペーパーや石けんは設置されていました。ただトイレットペーパーはまめに補充されないので、用足しする前に確認した方がいいと思います。

ちなみにエコノミークラスと接する側のトイレは狭く汚れ気味ですが、コンパートメント車両とコンパートメント車両の連結近くにあるトイレは広めで汚れも少なめでまだマシかなぁ。

トイレは日本の鉄道でも昔採用されていた、通過中の線路に垂れ流し方式です。ペダルを踏むと便器の底がパカっと開いて走行中の線路が見えるアレです。廊下でフルーツの皮を剥いてたお婆ちゃんが、トイレにゴミを捨てるという荒業を繰り出してました。垂れ流しなので駅停車中は施錠され使用不可になりました。

以前のヒヴァ玄関口「ウルゲンチ駅」

ウルゲンチ駅です。少し前までここがヒヴァの玄関口でした。私達が訪問する少し前に新しくヒヴァ駅ができて、鉄道が伸びたばかりだったんです。

ヒヴァ駅を出発する時点で乗客はほとんど無く、私達の車両に10人も乗ってなかったのですが、ここで一気に乗客が増えました。

隣の部屋には元気なご老人のグループが乗車、たちまち賑やかになりました。私達の下段には、ビシッとしたビジネスマン風の背の高い男性がやってきました。私が悪戦苦闘しながら上段に登る姿を見て気の毒に思ったのか「自分が上段に行くから下段をお使い下さいマダム」と親切に声を掛けてくれました。「大丈夫ですよ」と遠慮しましたが、終始優しい紳士でございました。

ウルゲンチには1時間15分くらい停まっていたかな?やけに長い停車ですが、どうやら先頭車両を切り離していたようです。

昭和の懐かしい食堂車で夕食

再び走り出した車窓はいつの間にか夕焼けに染まっていました。

通路をときどきカゴを持った男性の車内販売が通過しますが、歩くスピードが速くて何を売っているかも確認できないまま。(←後で確認できました。ジュースなどの飲料だった)

 

そして夜を前に車掌さんがシーツなのか、上掛けなのか、よくわからない布と枕カバーを各ベッドに配ります。

素材的にどう見てもシーツなんですが、同室の男性や他の部屋の様子を見ると、みんなコレを掛けて寝てた。もしかしたら本当はシーツなんだけれど、暑くて上掛けにしていただけのような気も…。

 

食堂車もあります。こちらも鄙びで、昭和の懐かしい雰囲気が漂い良かったです。

 

ビール、コーラー、ラグマ(ウズベキスタンのうどん)×2、パンを食べました。

 

ラグマはこぶりだけれど野菜たっぷりで、四国あたりのコシのあるうんどんのような麺も美味しかった。お会計は全部で39000スム(440円位)。食堂車だからといってとんでもなく高い値段設定ではなさそうです。

 

食事をしないで、ビール(500ml約120円/街で買えば80円くらい)や水(1リットル2000スム・約22円)などを買うだけもOKでした。

人間交差点・寝台列車

夜9時を過ぎる頃、同室の男性が寝たので電気を消して私達もおやすみなさい。

夜中に目を覚ますと、どこかの駅に停車中。空席だった片方の下段に若いお嬢さんがやってきました。これでようやくコンパートメント内の4席全部埋まりました。

うーーん、それにしても暑い…。部屋の天井の冷風はヒヴァを出発した最初だけチョロチョロっと出て、あとはストップ。夜の閉め切ったコンパ―トメントはとてつもなく暑かった。

 

次に目を覚ますと、またもどこかの停車駅でした。外は薄っすらと明るく、周囲はやがてオレンジ色に染まり、進行方向から太陽が昇ってくるのがわかります。

 

窓の向こうには、爽やかな大地が広がっていました。広大な農地に草をはむ牛たち。そして牛の乳を搾る女性も見えます。

 

列車が進むごとに草地に潜んでいた小さな鳥たちが大群になって飛び去ってゆきます。その横をのんびりと自転車を漕ぐ男性。

7時30分頃サマルカンドに到着。下段の男性はここで下車。入れ替わるように小さい子供を連れた夫婦がやってきました。ところがご主人だけ列車を降りて見送り、どうやら奥さんと子供だけがタシュケントへ向かうようです。

窓の外からご主人が子供の持っているお菓子の袋を「開けてごらん」とおどけた笑顔でジェスチャーしています。そしていよいよ発車の時、小さい子供と奥さんにいっぱいの投げキス。でもその顔はとても悲し気でした。

そしてご主人の姿が見えなくなる頃、キャッキャッとはしゃぐ子を抱っこしながら、奥さんはひとり涙をこぼしていました。どんな事情かはわからないですが切ない光景でした。

 

その横では、いまだ爆睡中のオジとお嬢。

 

サマルカンドを出発した列車は、いよいよタシュケントへ向かいます。アフラシャブ号なら2時間くらいで着いちゃいますが、その倍近くかけて寝台列車は進みます。まぁ、こういうのんびり列車旅も旅情があっていいじゃないですか。

この頃になると夜中にやってきた下段のお嬢さんもようやくお目覚め。雪のように白い肌に、ほんのり赤い頬がかわいらしい、白雪姫のようなお嬢さんでした。

食堂車で朝食

朝の食堂車にも行ってみました。

 

頼んだのはスープ系のナントかとナントか。隣の席にいたお兄ちゃん達に料理の名前教えてもらったのに、見事に忘れちゃいました。

 

ベースは同じ味濃いめのスープに肉と野菜がゴロゴロ入ったものですが、片方が雑炊のようなご飯入り、もう片方がトウモロコシ入り。

ウズベキスタンのスープ系は上層の油がラーメン屋「もちもちの木」級に凄いんですが、ここのはそれほどでもなく美味しかったです。

 

隣のテーブルのお兄ちゃん達が飲んでいたアプリコットジュース。「おいしいよ」と言うので私達も買ってみた。ほのかにアプリコット味のついた飲料水で、日本の「○○の天然水」みたいな感じで美味しかったです。

 

問題はこのコーヒー。まったくコーヒー感のない「コーヒー」です。ほぼ粉末ミルクと砂糖の味しかしない。うーーん、マズイ!作ったお兄ちゃんの匙加減だと思うんですが、笑っちゃうくらいマズ過ぎる。

朝食は全部でお会計38000スム(約430円位)でした。

 

廊下では、係のオジサンが石炭のようなものをくべてました。見ていたら身振り手振りでいろいろ説明してくれたけど、ウズベキスタン語だったからわからなかったなー。ウズベキスタン語、勉強しなくっちゃ。

タシュケント南駅に到着

タシュケント南駅に近づくと下段のお嬢さんは身支度を整え、貸し出されていたシーツや枕カバーを綺麗にたたんでいます。

その直後、車掌さんがシーツ回収にやってきました。この流れを知らなかった私達は大慌てでシーツを丸めてグシャグシャのまま車掌さんへダンクシュート。この流れを知っていたっぽいお嬢さんの綺麗にたたまれたシーツとの落差は激しかった。

 

11:36タシュケント南駅着。

タシュケント南駅に着くと、お嬢さんが「タシュケント、タシュケント」と言って、私達に一緒に降りるよう、うながします。

ただ、車両には降りる気配のないお婆ちゃん達がお茶をすすりながらまだたくさん乗っていて、その雰囲気からこの先にある「タシュケント駅(※)」が終着駅かな?と思っていた私達は「ワシは一歩も動かんぞ!」と頑固ジジイ級にまったく動こうとせず、お嬢さんをちょっと困らせてしまいました。※タシュケントには「タシュケント南駅」と「タシュケント駅」の二つの鉄道駅があります。この関係性がいまだにわからず。

やがて車掌さんまでやってきて、ここで降りるようにジェスチャーしてきます。車掌さんとお嬢さんに説得されるような形で渋々下車。後で思い返すと、言葉の通じない困ったインバウンドの見本みたいになってた。

こうして18時間の寝台列車旅は終わりました。

いろいろ世話をしてくれたお嬢さんとはホームでお別れ。

 

タシュケント南駅です。新しい印象のキレイな駅でした。

 

この駅前で声をかけてくるタクシーは相場より高いので、表の通りに出てタクシーを拾うか、ウズベキスタンで使われている配車アプリYandex(ヤンデックス)の利用をおすすめします。

 

初めて乗ったウズベキスタン鉄道の寝台列車。

日本じゃ往年スターの寝台列車や夜行列車が次々と姿を消し、絢爛に飾り立てた豪華列車ばかりを走らせるようになった今、こういう昔ながらの寝台列車を楽しめるって貴重だなと思いました。

あと、今さらですが、挨拶以外のウズベキスタン語を少し勉強しなきゃと思いました。
 

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