2019年2月26日
トレッキング初日の朝、ホステルが用意してくれた朝食を急いで食べチェックアウト。迎えに来たピックアップ車に乗り、今日から二泊三日のトレッキングツアーでお世話になる「UUNCLE SAM TRAVELS&TOURS」のオフィスに到着です。
ここで不要な荷物はスタッフに渡し、トレッキング後に泊まるインレー湖の宿(前回と同じホテル)に先送りしてもらいます。
あ、画像は前回の記事と同じものを使いまわしです。実はUUNCLE SAM TRAVELS&TOURSの画像、これ一枚しか撮ってませんでした。
ガイドさんと初顔合わせ(かわいらしい学生さん)
UUNCLE SAM TRAVELS&TOURSのオフィスや外の道路は、これからトレッキングに出発する参加者やそのガイド達でゴチャゴチャと混雑しています。
「へぇー、こんなにトレッキングする人がいるんだ」と、これにはちょっとビックリ。
その人混みを掻き分けベテラン風の男性が私達の元に寄って来て握手と挨拶。てっきりこの人がガイドさんかと思っていたら、「今日から二泊三日を共にするガイドです」と紹介されたのが・・
なんと、まだあどけなさの残るとてもかわいらしい女性、というか女子といった方がしっくりくるパオ族の「カム・オン」さんです。
眼鏡をかけた田舎の素朴な女の子といった雰囲気の・・といったら怒られちゃうかな?とってもかわいい女の子。
「よろしくお願いします」と簡単な挨拶をかわし、いよいよ出発です!左の菅傘を被った女の子がカムオンさんですね。この時、ほぼ同時に私達より少し年上のフランス人夫妻も出発しましたが、ご夫妻とは二泊三日抜きつ抜かれつの同ペースで進むことになります。
最初はカローの街歩き。素朴な街中にはアボカドの木がたくさんあって実もたわわです。
やがて林の中へ。
最初に目についたのがコレ!
インレー湖に滞在中、毎晩のように豪快にメラメラと燃え上がっていた野焼きの跡です。松の木(だったかな?)を着火剤にして焼くんだそうですよ。
前方からは水牛が。
やり過ごしたと思ったら更なる大群。
牛との混合バージョンです。こういう時はいつだって牛様優先。
眼下には険しい山々を切り開いた畑が広がっています。ひと鍬ひと鍬、気の遠くなるような日々を費やし造り上げた先人からの遺産ですね。
カム・オンさんのご実家も農家で、茶畑や野菜を生業にしているんだそうです。電気がまだ通っていない小さな農村だけど「とても美しい場所」と言っていました。ミャンマーは自分の故郷を誇りに思う子達が多いですね。
やがて小さな集落に到着。すれ違う集落の皆さんは、こちらが声をかけるとみんな笑顔で返してくれます。
即興で教わったパオ族の挨拶
「さようなら=ルイカンノゥ」
「ありがとう=ジェスバー」
「きれい=ラーデー」
「ごきげんいかが=メイカンラー」
「よい=メイカンデー」
「ダメ=メイカンブー」
(私の耳で聞こえた言葉をそのまま書きおこしているだけなので、他の人が聞いたら、また違って聞こえるかも??)
その集落の外れに大きな菩提樹(ブッダツリー)が涼しい木陰をつくる売店がありました。ここでひとやすみ。
熱いお茶とベビースターのような揚げ菓子をいただきました。爽やかに吹く風が気持ちよいです。
カムオンさんは学生さんで、学校の長期休暇時にカローに来てガイドをしているそうです。なんとUUNCLE SAM TRAVELS&TOURSには同じようなパオ族の学生ガイドが50人くらい所属していて、カローの寮で共同生活をしてるとのこと。
「へーーっ50人もっっ!」
「あの子が私のルームメイト」
と指さす方を見ると、今朝ほぼ同時に出発したフランス人ご夫婦が到着。
そのガイドをしていたのが、かわいらしい小柄な女の子です。声も小鳥のさえずりのようで、
「あの子も大学生!?」
「そう」
と言うと笑いながら大声で「●●ーーーっっ!」と茶化すように女の子に向かって叫びます。
「パオの言葉でおチビちゃんって意味」とカムオンさんがクスクス笑います。
すると向こうも笑いながら何かを言い返してきました。
「向こうは何て言い返して来たの?」
「パオの言葉で巨大とか・・」と今度は不満げな表情です。どうやら「おチビ」「巨大」と、お互いふざけて言い合ってるみたいですね。
この二人は本当に仲良しで、二泊三日のトレッキング中は出会うたびに常に声を掛け合って励まし合っていました。たぶんオーナーさんが二人のモチベーションを崩さないよう、何かあった時に助け合えるよう、同じコースを同じペースで進む同年代のゲストに付かせて出発させたんだと思います。ちなみにカムオンさんは韓国語を、おチビちゃんは中国語を勉強中だそうで「えー、日本語も勉強して」と言ったら「やってみようかな」って言ってくれましたよ。
のどかな集落で昼食とお昼寝
さらに進んで次の集落に到着。
おいしそうな「サヤいんげん」が収穫されていました。
こちらの建物の二階でお昼ご飯をいただきます。
この小屋の二階部分はところどころ床が抜けていて、足を踏み外しそうでちょっと怖い・・。
ボリューム満点の昼食をいただきます!この食事が優しい味でとーーーっても美味しいんです。ちなみにコレ、私達ふたりぶんの昼食です。超ボリューミー。
食後にお茶を飲んでいると、集落のお爺ちゃんが「ここに来る外国人と話しをするのが毎日の楽しみなんだ」と話しかけてきました。
このお爺ちゃん、私達の事を兄弟だと思い込んで(というか私のことを男だと思って)夫婦だと言っても最後まで信じてくれなかったな~。ミャンマーに来る直前、バンコクでカットしたら、タワシみたいなショートカットにされたのがいけなかったのかな?
食後はのんびりとお昼寝タイム。他にも二組グループツアーの人達がいましたが、みんな満腹&心地よい疲労でグッスリでした。
この村でペットボトルの水も販売しています。ツアー申込時に「通過する村ではぜひ水などを買って欲しいと」言われました。ささやかですが村の収益になるんですね。
集落ではスターチスの花を栽培していました。仏花として販売されるんだそうです。
お昼寝の後は再びトレッキング。
まるで北海道の美瑛のような広大な丘の畑がどこまでも続きます。
今は乾季ですが、これが雨季になれば緑の作物に彩られ美しいパッチワークの丘が見られそう。
野生のベリーの実。ひとつ食べてみたけれど甘酸っぱくて美味しかった。
乾季なのに突然の雷雨発生!
それにしても乾季のミャンマーはとにかく暑いです。
これだけ暑いと例の気象現象が・・・
真夏の東京の午後を想像していただければわかりやすいと思いますが、
そうです
どうも雷雨が発生しそうな雰囲気なんですよ。
案の定、冷たい風も吹き始めた瞬間、遠くの方でゴロっという雷鳴が。
隠れる場所も何もない広大な畑のど真ん中で雷は嫌だなぁと、カムオンさんに「雷、大丈夫?」と聞くと「大丈夫、大丈夫」と。
おそらく内心は「大丈夫」じゃなかったと思うんですが、とにかく先を急ぐしかありません。
急な天候の変化を察して農作業中のパオ族の女性たちも収獲した作物を背負い急ぎ足で撤収する姿が見えます。
いよいよ大粒の雨が勢いよく落ち始め、唐辛子の実を激しく揺らします。
私達は急いで持参のレインスーツの上着を着ましたが、瞬く間に土砂降りになったんでをズボンが間に合わず腰から下がビシャビシャに。
カムオンさんは落ちていた肥料袋を背負って私達を和ませようと「レインスーツ」とおどけてみせます。
その後も雨は強くなる一方で、大きく雷まで鳴り始め、足元を雨水が川のように流れています。
杭に繋がれ置いていかれた水牛が雷の音に怖がってグルグルと狂ったように走り回っていました。
急いで辿り着いた小さな集落。
その一軒の軒下で雨宿りをさせていただくことに。
壁に背を向けて雨風をしのいでいると、このバンブーハウスの柔らかな壁を利用して家の中から誰かが壁をユサユサと揺らすんですね。突然壁が揺れるんで私達が「うわっっ!」と驚くと中からキャッキャと子供達の笑い声が。どうやらこの家の子達が中から竹製の壁を揺らして驚く私達を見て大はしゃぎしているようです。
カムオンさんは「ここの家は私の友達の友達だから」と言って、中で雨宿りさせてもらえるよう交渉。すぐにOKが出て「じゃ、中で雨宿りさせてもらいましょう」ということになりました。
さて、いよいよお宅に入ろうと靴を脱いだ瞬間
ドーーン!!
物凄い地響きと振動が響き渡りました。(あっ、近くで雷が落ちた!)
その瞬間カムオンさんがキャアア!と悲鳴をあげ私に抱き着いてきました。(そうだよね、ガイドだから気丈にふるまっていたけど、この子が一番怖くて不安だったんだと思う)
簡素なバンブーハウスの中には囲炉裏があり、暗闇の中にあたたかな火がパチパチと燃えていました。その囲炉裏の横にはカムオンさんと同年代くらいのお兄ちゃんを筆頭に高校生くらいの男の子が2~3人いて明るい笑顔で迎え入れてくれました。
その男の子達の後ろには、まだ小学年くらいの小さな子が三人、緊張の面持ちで背筋を伸ばして正座しています。
(さっき、壁を揺らしてイタズラしたのはこの子達だなぁ)と、ひとりひとり顔を覗き込むと、いよいよナマハゲに見つかった子供のように緊張の色を増す様子が、もぅおかしくて、おかしくて、こちらは笑いをこらえるに必死。
その直後です。
慌てた様子で欧米の若者三人組を連れたガイドさんが飛び込んで来ました。
まだ若い欧米の子達はびしょ濡れで恐怖でひきつった青ざめた顔をしています。尋常ではない様子の彼女たちが口々に
「すぐ目の前に雷が落ちた!」
「30m先だよ、本当に目の前!ビーンと来て死ぬかと思った!」
「怖い、怖い、先に進むのは怖い!」
この状況で外を歩くのはさすがに危険なので、全員ここで雨が止むのを待たせてもらうことにしました。
囲炉裏の炎のあたたかさが身に沁みます。
雨宿り中はお兄ちゃんのギターと歌で、ほのぼのとしたひととき。気が付けば恐怖で青ざめていた若者三人組も笑顔。
ナマハゲ(私達)乱入で緊張していたガキんちょ達もこの通り。
気が付けば、すっかり雨が止みチラリと青空ものぞいています。
急な雨宿りを受けてくれて本当にありがとう。家に快くあげてくれたお兄ちゃんにお礼と名前を聞いて握手。そしてカムオンさんに「いくらか置いた方がいい?」と小さく聞くと「ここはいい。私の友達の友達だから」と。
笑顔がキュートな人懐っこいイタズラっ子。十年後もしトレッキングガイドしていたら、そのときは私達を案内してね。
そして再び、雨上がりのぬかるんだ畑の道を歩き始めます。空は清々しい青空です。
やがて、どこかで雨宿りをしていた別のグループも合流。
なんとガイドの男の子は裸足!「大丈夫なの?怪我するよ?」と聞くと「僕はスーパーマンさ!」と、陽気なこたえ。
このグループに欧米人に混ざってひとりだけ参加していた東アジア系の男性と目が合い、お互い同時に「こんにちは!」「ニーハオ!」と挨拶です。てっきり日本人かと思っていたら中国の方でした。向こうは向こうで私達のことを中国人だと思ったようで。
たわいもない会話を少しした後、三昧が「中国のどこから来たの?」と聞くと、予想もしなかった都市名が・・
「南京です」
私が一瞬(アッ・・)という表情をしたのかどうか、瞬時に男性がそれを打ち消すように満面の笑顔で
「僕は日本が大好きです!」
世界旅行が好きで日本も何度も行ったというこの男性、とっさにその場の空気を和ませる気遣いのある人なんだと思いました。
南京と日本の複雑な歴史関係をまったく知らない三昧は、ただひたすらラーメンがどうのこうの話しをしてましたが。
そうこうしているうちに本日の宿泊地ジャンスー村に到着です。
日本が好きだと言ってくれた男性、別れ際にしみじみと
「中国は自分達の大事なものを自分達の手で壊してしまった。その私達が壊してしまった大切なものを日本が残してくれました。」
と言います。
それが文化財的なものか、なにか精神的なものか、それを明日また会ったら聞こうと思っていましたが、この彼とは結局もう二度と会うことがありませんでした。
「彼とはもっと、いろんな話をしたかったな・・」
一泊目の集落・ジャンスー村
さて、この日お世話になるジャンスー村。
一見するとそれほど大きく見えないんですが、
約100世帯400人居住の(カムオンさん調べ)大きな農村です。
私達のホームスティ先は、お婆ちゃんが水牛と暮らすこの家です。他のツアー会社がどうかわかりませんが、UUNCLE SAM TRAVELS&TOURSでは1軒につき1グループのみ受けているようです。
一階が水牛小屋。
そして二階が仏間とお婆ちゃんの寝室です。
私達の利用する布団は仏壇の前に用意されていました。翌日に宿泊したお宅でも仏壇の前に用意されていたので、この仏間に客さんを迎えるのがミャンマー流の「おもてなし」なのかもしれません。
窓の外はのどかな集落の眺め。
この母屋のすぐ隣には囲炉裏のある炊事小屋があり、カムオンさんが今晩の夕食の準備をしています。
そうなんです、トレッキング中に出される食事はカムオンさんの手料理なんです。
そして並んだ手料理がコチラ。どれもミャンマーらしからぬ優しく美味しい味付けで、若いカムオンさんがこれほどの料理を作れるなんてと感心していると、やっぱりローカルなミャンマー料理は外国人にはNGで、ガイド研修の時に先輩についてトレッキングコースと英会話そして外国人向けの料理を学ぶんだそうです。
それにしても量が凄い。パッと見ても4人前くらいはある。
「カムオンさんも一緒に食べようよ」
「私はもう食べました」
「お婆ちゃんも一緒に食べようよ」すると、お婆ちゃんが飲んでいるコーヒーを指さして「いらない」の仕草。
カムオンさんいわく「夜はコーヒーだけ飲む習慣みたい」
だそうです。
薄暗い囲炉裏端では座っている周りをチョロチョロとゴキブリたちが這い回っていますが、なぜか全然気になりません。そして誰も気にする様子もありません。ここではゴキブリはいて当然の存在のようです。
もちろんシャワーなどはなく、ケーシングパイプに水をためた水場で顔と足を軽く洗いました。
トイレは畑に隣接する簡素な小屋がありました。いわゆるボットン和式ですが、これがなかなかよくできていて、用足しした糞尿が滑り台に乗って外の肥え溜に流れ落ちるシステムです。なので日本のボットンのように上から中身の糞便が丸見えだったり臭いがキツイこともなく、うまく作られているなぁと感心しました。お尻ふき用に木の棒も数本用意されていましたが、これは玄人向きでしょう。
この村の電力は乏しく一定の時間になると消されます。ただお婆ちゃんは私達を気遣ってか、階段近くの小さな灯りだけはつけっぱなしにしてくれてました。
布団は日本でいう懐かしの煎餅布団ですが、一日歩いた心地よい疲労の中、ぐっすりと眠ることができました。
夜中に一度だけ蛇口から出る水のような音で目が覚めます。どうやら下の水牛くんのオシッコの音のようで、それに続いてぷぅ~っっというオナラの音までも。この音がツボにはまり、しばらく笑いが止まらなくなってしまいました。
トレッキング初日からいろんなことがあって、濃厚な一日だったなぁ・・。
明日は雨が降らなきゃいいなぁ。
つづく。