本日は雲ノ平から高天原温泉を目指します。
ぐんぐんと樹林帯を下り、
高天原峠を経て清流を渡ると・・
パッとワタスゲ揺れる明るい湿地に出ました。
しばらく鬱蒼とした樹林帯が続いていたので、青空の下に揺れるワタスゲにちょっと嬉しくなってしまいます。
更に進むと広々とした美しい草原に飛び出します。草原の入り口ではひとりの男性が刈り払いの真っ最中でした。
「もしかしてご主人ですか?」と声をかけると、「はい、お待ちしています」と草刈り機を持って先へ歩いていかれました。「あ、高天原に着いたんだな」と、この時わかりました。
高天原山荘は美しい景色の中にありました
草原の向こうにワタスゲの群生が静かに揺れています。
草原を見下ろす小高い丘が見え、椅子とテーブルが置かれていたのでちょっと寄ってみました。
素敵な案内板がありました。
その高台から見下ろすと・・・てっきり草原かと思っていた場所には美しい湿原が広がっていました。
そして、その横には、
高天原山荘です。訪問前は荒涼としたガレ場に建っているのかな?なんて想像していたんですが、実際はそよそよと美しく草が風に揺れる湿原のほとりにポツンと建つメルヘン世界の山小屋でした。
高天原山荘到着!
11:50高天原山荘に到着しました。
高天原山荘周辺には幕営指定地がないようなので、今日はこちらで一泊二食付きでお世話になります。
ここ数日間、車中泊とテント泊が続いていたので、久々にちゃんとしたお布団で寝られるのが嬉しいし、アルファ米じゃないちゃんとしたご飯とおかずが食べられるのも嬉しいなぁ。よおーし、ゆっくり体を休めるぞ~。
そして何より驚いたのが、高天原山荘は屋根がひん曲がったボロっちい画像ばかり印象に残っていたのですが、実際にお邪魔してみると、数年前に建て替えられたばかりという館内はどこも清潔でとても雰囲気いいです。ぬくもりある秘湯の宿といったホッとする優しさを感じます。
すぐ横は湿原という立地もいいですね。
高天原山荘・宿泊部屋
まず受付を済ませると、寝る部屋と布団の番号を告げられます。私達は二階の29と28でした。画像はちょっと暗めですが、実際はそれほど気になる暗さではありません。
全体画像を見ると通路を挟んで左側は布団が二列にズラーーと並べられてますが、この日はお客さんはそれほど多くなかったようで、窓側一列だけの使用でした。
またグループとグループの両側には布団ひとつぶん空けてあり、他人とはある程度の間隔を空けて寝ることができるのもよかったです。お客さんの多い日はそうもいかないのかもしれませんが。
ザックなどの大きい荷物は使用していない布団の前など空いたスペースに置いてもいいと言われました。
大部屋には三人分だけ仕切られた小部屋のような箇所もありました。
この大部屋の外にはテラスがあり、イスとテーブルが置かれてちょっとした休憩スペースになっています。ここで景色を見ながらノンビリできそうですが、昼間は直射日光が暑くてあまり長居ができません。
私達の利用した部屋が高天原山荘のメインルームのようで、その他にも屋根裏のような小部屋や、
一階には二段ベッド式の小部屋もありました。この一階の小部屋がちょっと曲者で、奥のカーテンの向こうがトイレになっています。
トイレ自体の臭いはそれほど強くありませんが、ただやっぱり多少の臭いはあるし、何より昼夜問わず出入りのある人の気配がカーテン一枚で感じられてしまうので、近い布団の人は気になってしまうと思います。トイレと部屋の仕切りを扉ではなくカーテンにしたのは、何か理由があるのかなぁ?
この小部屋はランプ置き場にもなっていました。
これは階段の途中に貼られたお客さんたちのメッセージです。思い出をここに自由に書くことができます。
これを読むと皆さん本当に楽しく過ごすことができたんだなぁ・・とよくわかります。
高天原山荘の食堂と食事
一階には食堂があり、朝夕ともここでいただきます。お昼ご飯の提供もあるようですが、調理担当のスタッフが不在の時は不可となるようです。
薄暗くなると食堂にランプが灯ります。
夕食(上の画像)17時、朝食5時で、朝早い人は朝食をお弁当に変更もできるようです。食事は朝夕とも質素な山小屋の食事といった感じですが、テント泊でアルファ米が続いていた身にはどれも美味しくいただく事ができました。
各テーブルにはポットに入った熱いほうじ茶も置かれています。山だとちょっと熱い飲み物が飲みたい時でもバーナーで沸かさなくてはいけないので、その手間がないのが嬉しいです。
ご飯と味噌汁はおかわり自由で、各テーブルには漬物などご飯のお供も置かれていました。
高天原山荘では登山道の最新状況も得られました
食堂入り口前にある山岳情報です。天気・現在の危険個所の最新情報が掲示されます。高天原山荘は太郎平グーループのひとつなので、無線で各小屋がやり取りを行い、登山者などから得た登山道状況も含め常に最新情報が入ってくるようになっています。
ちなみに2018年7月下旬宿泊時は、こんな具合に掲示されていました。
大東真道。(2018年7月下旬)
高天原山荘の快適なトイレ・更衣室・乾燥室など
トイレはまだ新しい感じで、受付側から入ると先ず手洗い場と男性用小便器があり、その横にズラッと個室が並んでいます。個室は男女共用と女性用に分かれているので女性も気兼ねなく利用できます。トイレは洋式で清潔、トイレットペーパーもあり、臭いも山のトイレの中では少ない方です。
夜になると個室内に小さなライトが置かれるのも助かりました。
今回の縦走で巡った山小屋トイレの中では黒部五郎小屋と競う快適さでした。
一階には談話室と更衣室、乾燥室があります。談話室はちょっと手狭で、ひとグループがいると他の人は入れないような感じですね。
更衣室はその談話室内にあります。
乾燥室にはストーブが置かれていますが、訪問日は「つけると暑くなっちゃうから」とのことで点火されませんでした。
この時はまだ何もありませんが、やがてお客さんが続々と到着するにつれて、たくさんの衣類が干されていました。狭い小部屋に洗濯物がギュウギュウで乾きもいまいちなので、我家は外に干させていただきました。
ここが外の干場です。談話室かトイレからここに出られます。この干場には水場もあったので、速乾のシャツなどちょっと水洗いしてから干させていただきました。
この日は天気がとても良かったので中の暗く閉鎖的な乾燥室で干すより全然乾きが良かったです。でも靴下は相変わらずまったく乾きませんね。翌日、ザックに括り付けて乾かしながら歩きました。
建物の軒下にはビニールシートで雨夜けがされた雨具用の干場もあります。天気良すぎるこの日は、誰も利用者はいませんでした。
そんな湿った靴下に翻弄される人も多いのか、オリジナルグッズの中には定番のTシャツの他に靴下もありました。
そういえば山にいると「とんでもない」とか「酒が好き」はうじゃうじゃ見かけるんですが「高天原」は一度も見た事ありませんね~。ある意味レア?
高天原山荘の飲料販売と水場
飲料の販売もあります。
飲料は受付で料金を支払い外のクーラーボックスから取り出します。
水場は、館内の談話室手前と
玄関横の広場にあって、
蛇口を捻ると沢から引いた水がじゃんじゃん出てきます。この水はそのまま飲めるそうです。※飲用については水質の変動もあると思うので、必ず小屋にて最新状況を確認されてください。
玄関前のイスとテーブル
玄関前はテーブルと椅子が置かれたちょっとした広場になっていて、早立ちの人などはここで自炊をしたり準備をしていました。
実はココ、二階の大部屋の真下にあって、ちょっとした話し声も大部屋に筒抜けなんです。早朝準備していた人達のお喋りや笑い声がかなり響いてました。早朝、ここで準備をする人は、そっと静かに利用されるといいかもしれませんよ。
この広場、昼間も寛ぎスペースとして使いたいとこですが、真夏の訪問では日中は直射日光、夕方は虫が多くあまりゆっくりできません。
高天原山荘といえば高天原温泉!
高天原山荘といえば高天原温泉です!高天原温泉は小屋から歩いて20分~30分ほどの沢沿いに位置しています。道中は完全な山道なのでサンダル履きは無理ですよぉ。
小屋からは沢まで下る事になるので、とにかく帰りが大変です。特に日中は直射日光が容赦なく照り付けるので、せっかく温泉に入ったのに帰路で汗だく。ご主人も「昼間は暑いからおすすめしない、夕食後が涼しくて静かでおすすめ」との事。
実際夕方行くととても快適でした。ただし沢なのでブヨがたくさん飛んでます。今回の北アルプス周回の最終日に瞼を痛々しく腫らした男性がいて「高天原温泉で刺された」と言ってました。どちら様もご用心。
夜間は入ってはいけないなどの禁止はされていませんが、あくまでも自己責任でとの事です。
温泉はタマゴ臭のプンプンの白濁でとても良いものでした。男女別露天風呂と混浴露天風呂があり、前者と後者は湯の違いからどうやら別源泉を使用しているようです。
大展望というロケーションではありませんが、周囲を北アルプスの深い山々に囲まれ、清々しい湯浴みが楽しめます。なにより山行中に温泉に入れてしまう贅沢さ、メインの縦走路から少しだけ外れてしまいますが、こういうゆったり山行もなかなか贅沢でいいなぁーと思いました。
ちなみに300円で立ち寄り入浴も可で、小屋前に料金箱が設置してあります。
ランプの灯る高天原山荘の夜
高天原山荘はランプの宿としても有名で、夕暮れ時になるとあちこちに柔らかな明かりがが灯ります。
就寝後は消されるものと思っていましたが、一晩中ランプは灯っていました。大部屋のランプも灯されたままなのでヘッドラップは一度も使わずに済みました。
さすがに北アルプス深部の縦走路にある小屋だけあって、利用するハイカーさんはベテラン勢が多く夜はとても静かでイビキのかけあいを除けばとても静かに過ごせました。
つづく。