ラダックの北の果てバルティスタンのトゥルトゥク(Turtuk)
2019年7月
レーから1週間の行程でローカルバスを乗り継いでヌブラ渓谷に点在する集落を訪ねました。最初に訪れたのはパキスタンとの国境近くに位置する小さな集落トゥルトゥク(Turtuk)です。
かつてはパキスタンだったトゥルトゥク。インドとパキスタンとの領土争いに翻弄され、今現在も軍事的な緊張の続く地域で、外国人の入域は2010年に開放されたばかり。そして私達の訪問した2019年8月はここから先へ外国人は行くことができませんでした。(今はどうかな?)
急峻な山々に囲まれたトゥルトゥクは、農業が主な産業で、アンズ、桑の実、クルミが特に名物。水路には清流が引かれ、道端では花が咲き、あちこちに黄金色の麦が干される素朴な集落でした。
出会う人たちは、ちょっぴりシャイで、はにかみながら笑顔を返してくれます。
訪問時のトゥルトゥクでは一日の通電時間が限られていて、私の記憶に間違いが無ければ夜は19時頃から23時まで、朝は4時~5時の1時間だけ電気が使えました。朝4時にアザーンが聞こえたので、村人にとっては大切な1時間なんだと思います。アザーンが響くと、それに刺激されるのかロバ達もブヒーッ、ブヒー、ブヒーと鳴き始めます。
ホームスティ先の御主人が「今工事をしていて来年にはここまで電気が通るんだよ」と言っていたので、今では快適な暮らしになっているといいなぁと思います。
トゥルトゥク一帯は、古よりバルティスタンと呼ばれ、現在も脈々とその暮らしが継がれていました。
実際に訪れてみると出会う人々は、バルティスタンの民であることへの凛とした不変の誇りと強さがあり「あぁ、ここはインドでもパキスタンでもない、バルティスタンのトゥルトゥクなんだ」としみじみ感じました。
トゥルトゥクの迷路のような集落で迷子になる
今回私達はバスで知り合ったインド人のサンディブさんアリャさんご夫婦、台湾人のヒェさんと一緒にホームスティタイプのお宅に2泊お世話になりました。
部屋に荷物を置いたら散策へGOです。トゥルトゥクの集落は、水路に沿って迷路のように石組みの素朴な家々や家畜小屋が立ち並んでいました。
途中で出会ったかわいらしい女の子二人組。素敵なドレスを着たオシャレさんです。
ちょうど収穫の時期なのか、あちこちに麦わらが干されて柔らかないい香りがします。
これは燃料にする家畜の糞を干してるのかな。
それにしても住宅地の迷路っぷりが凄い。
「外部からの侵入者を惑わすためにわざとこういう造りにしたんじゃないの!?」と思うくらい入り組んでる。
ここは家畜小屋かな?知らないうちに人様のお宅の中庭に入り込んだっぽい。家と道の境目がまったくわからないよー。
ここはどこだろう?どうやら住宅街から離れつつあるような??
ついに畑地帯に突入。もはやどこにいるのか、どっち方面へ戻っていいのかわからなくなってしまった・・・。
誰か助けてーーー。
この後、半泣きになりながら見知らぬお宅に助けを求めて、スティ先のオーナーさんに迎えに来てもらう大失態をやらかしました。まさかこのトシで本物の迷子になるなんて超恥ずかしかった・・・。
極東からの訪問者をお婆ちゃんが涙して喜んでくれた
トゥルトゥクでは行く先々で本当にとても良くしていただけました。たわわに実ったアンズの実や桑の実は「採っていいよ」ってことで手の届くところをいただきました。追熟させたアンズを食べさせてもらった時は「こんな美味しいアンズはレーにもダラムサラにもなかったよ!」と、その甘さにビックリ。
アリャさんは桑の実を初めて見たようで、最初手に乗せたときは毛虫かと思って本気で驚いてドスの効いた悲鳴をあげてた。おそるおそる食べてみてその美味しさに目がキラーンと輝いて、その後はずーーっと桑の木に張り付いて食べ続けてました。「採っていい」と言ったお宅もまさかこんな爆食いするとは思わなくて(いいって言わなきゃよかった)と後悔したかも。
皆で散歩中に出会ったお婆ちゃんは、私達が日本と台湾(ヒェさん)から来たと知るとビックリした顔になり「・・・そんな遠いところからお客さんが来てくれるなんて」と声を詰まらせ大感激してくれ、手を握って涙を流して喜んでくれました。
その横では通訳してくれたお婆ちゃんのお孫さん(若いお兄ちゃん)が、優しい顔で喜ぶお婆ちゃんを見つめていた姿が印象的でした。
一般のお宅でお昼をご馳走に
かわいい子供達や優しいお奥様のいるこちらのお宅では、お昼ご飯をご馳走になってしまいました。
とっても美味しいカレーを皆でいただきました。
ご飯の後は皆でこれまで撮った写真を見たり楽しいひととき。
せめてものお礼に食後のお皿洗いを申し出たら「いいのいいの」とお断りされたので、すっかり甘えさせていただきました。この後トルコやタジキスタンなどイスラム世界を旅して、ご馳走になったり車で送ってもらったり本当によくしてもらうことが多かったです。
センス抜群のおままごと
散歩の途中で見かけた、女の子3人組のカワイイおままごと。
飾り付けが素敵で写真撮らせてもらいました。お洒落な雑誌の表紙みたい。
ちっちゃな葉っぱ団子もカワイイ。
ヤギを食べる?ヤギが食べる
水路端では男性が突如ヤギ(?)っとガシッと抱え込んで持ち上げて強制連行。「どうするの?」と聞いたら「食べるんだよ」というので興味津々「家についてっていい?」「いいよ」で後をついていくと・・・
男性宅の中にある小屋にヤギを入れて(いよいよ〆るのか?)と固唾をのんで見守っていると・・・大量の牧草をヤギに与えて「ほら、よく食べてるだろ」・・・・・どうやら「ヤギを食べる」じゃなくて「ヤギが食べる」だった事が判明。ちょっと安心。
ホステルオーナーが機を織る
こちらは2泊目にお世話になったホステルの機織り機です。飾りでもなんでもなく現役バリバリの仕事道具です。(※一泊目と二泊目はご親戚同士すぐ近くの別経営ホステルで、せっかくなのでそれぞれ一泊づつお世話になりました)
機織り機の近くには完成品のショールがたくさん。丈夫で長持ちしそうな風合いでなかなか良さげ。
いったい誰が機を織ってるのかなぁ?奥さんかなぁ?・・・と思っていたら・・・
ご主人が織ってました。慣れた手つきで機織りをこなすご主人。凄い。
インドのハルキスト現る
夕食時、物静かでほとんど喋らないサンディブさんが「実は村上春樹の大ファンなんだよね」とポツリと一言。奥さんのアリャさんが「熱狂的よ」と付け加えました。著書は全部持っているらしく、なんと「普段読む用」と絶対に触らない「保存用」の2冊づつ買って本棚にズラーっと並べているらしい。それを聞いたヒェさんが「どの作品が一番好き?」と聞くと「ノルウェーの森」とこたえて「うぁーロマンチスト~」とからかわれていました。
インドの北の果てで国の違う人たちが話題にして盛り上がる村上春樹ってやっぱり凄いなぁ。
→次回はトゥルトゥクの観光スポット「ヤブゴ宮殿、バルティ博物館、仏教寺院」を巡ります。