2024年お盆は予定していたテント泊4日5日縦走が台風の影響で泣く泣く中止、そのかわりに普段は距離的に行きにくい木曽御嶽山の天気がよさそうだったので日帰り山行へ行ってきました。
今回歩いたコース・黒沢口(中の湯口)→山頂→二ノ池→三ノ池→黒沢口(中の湯口)
御嶽山には幾つかの登山口とコースがあり、今回歩いたのは「黒沢口(中の湯口)→山頂→二ノ池→三ノ池→黒沢口(中の湯口)」です。
黒沢口ルートは途中までロープウェイでも行けますが、運行開始時間まで待っていると出発が遅くなってしまうことと、古くから歩かれている「御嶽古道」にも興味があって、せっかくなので文明の利器は利用せず全行程徒歩にしてみました。
黒沢口(中の湯口)駐車場
今回利用した登山口は御嶽山六合目に位置する黒沢口(中の湯口)です。「人気の百名山だから駐車場は混雑するはず!!」と、北アルプスや八ヶ岳並みの争奪戦を想定して前日の夜に鼻息荒く乗り込んでみたら「・・・あれ?」予想に反して駐車場はガラガラ。うーーん、みんな他の登山口(大滝口やロープウェイ)を利用するのかなぁ??
黒沢口(中の湯口)は、登山口とトイレのある上段とその手前の下段の二か所に駐車スペースがあり、それぞれを徒歩数分で行き来できます。駐車可能台数は「木曽おんたけ観光局」のパンフレットによると50台と記載されていました。ちなみに王滝口は300台、ロープウェイ駐車場はなんと1000台!!凄い・・・。
上段の駐車スペースにはトイレもあり「前乗り」の仮眠場所としては便利なのですが、登山の注意喚起放送がずーーっと流れています(それほど大きい音ではない)。下段に比べて利用者も多いので、前泊の仮眠は下段で、出発時に上段に移動することにしました。
駐車場のトイレはボットンですが臭いは少なめでした。清掃が行き届きトイレットペーパーもありましたが、なぜか訪問時は洗面台の水が出ませんでした。
黒沢口の別名「中の湯口」ですが、登山道入って少し歩くと広々とした更地があり、以前はここに温泉を引いた中の湯という宿があった名残のようです。現在では建物は既に無く、古い祠だけが残されていました。
御嶽古道の霊神碑群
今回利用した黒沢口(中の湯口)は、御嶽古道として古より多くの参拝者に歩かれて来た歴史があるようです。そのため、登山口に至る道路沿いや森の中には、驚くほど無数の石碑がありました。
御嶽山には御嶽講というのがあり、死んだらその魂は御山(御嶽山)に還ると信じられていて、その魂を宿すためにこれらの石碑が建てられたそうです。その数なんと2万とも。御嶽講がブームだった当時はグループごとに競うように建碑したのだと思います。
黒沢口(中の湯口)駐車場~八合目・女人堂~黒沢十字路
朝5時3分、準備を整えて駐車場トイレ横の登山口を出発。しばらくはジメジメとした樹林帯を歩きます。登山道には古い祠や石碑が点在していました。なかなかの登りで蒸し暑さも加わって初っ端からキツイっっ。
さすが古くから歩かれてきた道はしっかりと踏み固められ、御嶽講が盛んだった時代には白装束の参拝者が大勢行き来したんだろうなぁと、思いを馳せました(昔の人もこの登りはキツかったはず)。
ところがその歴史ある御嶽古道がやや放置気味。歩きやすいように木材が敷かれているんですが、かなりの年数が経過したようで痛みが激しい。
現在ではロープウェイ利用者が圧倒的に多いのかもしれません。というのもロープウェイ合流地点の手前と先では、登山道の整備具合に差が感じられました。
分岐の少し手前に八海山支店と看板を掲げた小屋がありましたが、休業してから随分と長い年月が経っているようでした(いつから営業していないのかな?)。
ロープウェイ合流地点。ここから登山道の様子が変わります。合流地点の上と下、御嶽古道の行く道を分けた文明の利器。ここから山頂方面へ歩いてすぐのお茶屋さんは元気に営業中でした。行きは時間が早くて営業前でしたが、帰りに「ぜんざい」をいただきました。
八合目(女人堂)です。パっと明るく眺望が開けました。
玄関の向かいには休憩できるベンチ広場があって、ちょっとした展望所みたいになっていました。・・・おっ、雲海が見える。
女人堂の杖洗いの石。解説を読むと下界の汚れた砂を上に持ち込むなかれってことかな?日光の男体山は逆に上の神聖な地の砂を外に出さぬよう、靴洗い場が設けてあります。ほとんどのハイカーさんは気が付かずにスルーしていたけれど。(このハムスターなんだろ?)
石碑の向こうに見えるのが山頂部かな?
女人堂の周辺にはイワギキョウがたくさん咲いていました。
八合目から山頂までは眺望抜群のガレた登山道が続きました。久々に息が上がって苦しかったー。標高が高いからね。登山道上は比較的浮石多めな印象を受けました。どちら様もご用心。
黒沢十字路です。ここは剣ヶ峰・王滝頂上・二ノ池の分岐でまさに名前の通り十字路。先に「剣ヶ峰」へ行き八丁ダルミを通って「王滝頂上」に行き再びココに戻って二ノ池方面へ行こうと思います。
御嶽山山頂(剣ヶ峰・王滝頂上)
剣ヶ峰直下まで来ました。立派で新しいシェルターがありました。
新しい慰霊碑がありました。2014年の噴火災害以前はここにも山荘があったそうです。
あの大災害から10年。初報をニュースで知った時の衝撃は今も忘れることができません。時間を追うごとに被害の甚大さがあきらかになり、入山されていた人たちの無事を祈るばかりでした。いまだに行方不明の方がいることを決して忘れてはならないと思います。
剣ヶ峰です。ここが御嶽山の頂上らしいです。
御嶽神社奥社で御朱印いただきました。(お兄さんが火口や雷鳥のことを教えてくれました)
御朱印帳を忘れたので書き置きで。
「ここからは見えないけれどこの真後ろに火口がある」と奥社のお兄さんに教えてもらったので横から覗いてみました。全容は見えないけれど、火口らしき端っこがちょっとだけ見えた。
お次は八丁ダルミを通って王滝頂上へ向かいます(画像は王滝側から剣ヶ峰方向を見た八丁ダルミ)。ここにも立派なシェルターがありました。
火口近くを通るので急いで通過するようにと掲示がありました。
御嶽神社頂上奥社本宮です。ヘルメットを脱いでお参り。御朱印の書き置きはここにもありました。
頂上奥社社務所から階段を下りるとベンチスペースがあって、たくさんの人が休憩していました。ここで急に人が増えたのでちょっとビックリ。王滝口から入山人が多いのかな?高所でグッタリしている人もチラホラ。この光景は富士山の山頂に似ているなぁと思いました。
ここには真新しい畳敷きの広間があり、中を覗いていると男性が来て「靴を脱いで休憩してもいいんですよ」とのことで遠慮なく上がらせていただきました。中に入ると「王滝頂上避難施設」と書かれた立派で真新しい看板が壁際に置かれていました。この避難施設でちょっと長めの休憩。
黒沢十字路~三ノ池
黒沢十字路まで戻った後は、二ノ池の横を通りサイノ河原、三ノ池、そして女人堂へ戻ります。
荒涼とした二ノ池。噴火前の画像を見ると、どうやら以前は三ノ池のような澄んだ水を湛えていたらしいです。二ノ池方面へ来ると登山者が急に少なくなりました。王滝口・黒沢口から御岳山の山頂部ピストンの人が多いのかな?
二ノ池山荘を過ぎたあたりから登山道の両側にハイマツ林が続きました。御朱印をいただいた御嶽山神社奥社のお兄さんに「二ノ池からサイノ河原手前のハイマツで雷鳥がよく見られる」と教えてもらったので、ゆっくりノロノロと探しながら歩いたけれど会えなかったなぁ。
サイノ河原です。チングルマの果穂があちこちにあったので、花のシーズンは綺麗そう。
サイノ河原から少しばかり登り、白竜小屋まで来ました。この辺りに来るとトレランの人が増えました。
おじゃましまーす。中を覗いてみるとシンプルな無人の避難小屋でした。
白竜小屋近くの摩利支天山にも行こうか迷いつつ、へっぽこハイカーなので三ノ池へ下ることにしました。白竜小屋からの下りは登りだとボヤキが出そうな、なかなかの激下りです。
三ノ池まではハイマツ林。ここも雷鳥がよく出るらしい。途中からガスが出始めたので雷鳥くんの出現を期待したけれど、結局姿を見せーず。
その後、三ノ池を見下ろす小高い丘でまたも長い休憩。今日は下山後すぐに帰宅しなくていいから気が大きくなっています。
丘のザレ場にはコマクサが点々と咲いていました。ただピークはとっくに過ぎちゃってました。
三ノ池~女人堂~黒沢口
三ノ池から女人堂へ戻ります。今回歩いた中で、この区間の前半が一番危ないなと思いました。技術を要するとかではなく、落石が起こりやすく常に周囲の変化や足元にも気をつかう場面が多かったです。
最初は沢筋に沿って。
「これ造るの大変だったろうなぁ」と思わず唸る急斜面に設置された階段。整備された皆さんに感謝です。
お次は水の綺麗な沢を横切ります。
お次は落石要注意の沢筋をトラバース。いつ石が落ちてきても不思議じゃない様子に「うわぁぁ」となりました。
後半は歩きやすい穏やかな登山道に癒されながら女人堂まで戻って来ました。女人堂でトイレをお借りし、山バッチを購入。
女人堂からは朝歩いて来た道を淡々と下るだけ。
途中の七合目、行場山荘で名物ちから餅(ぜんざい)一杯500円をいただきました。13時40分頃の到着で売り切れ寸前でした。
疲れた体に甘ーーい「ぜんざい」が染み渡る。
すれ違う人もほとんどいなくなった午後の登山道を下って駐車場ゴールです。お疲れさまでした。
下山後温泉は、非加熱源泉掛け流しの「鹿の瀬温泉」で癒されました。
さとテラス三岳(2014年の御嶽山噴火災害を忘れない)
道の駅三岳に併設された御嶽山ビジターセンターの「さとテラス三岳」です。2022年8月27日にオープンしたまだ新しいビジターセンターです。おそらく2014年噴火災害が発生した9月27日という日付から、この27日をオープン日にしたのかなぁと思いました。
外光が明るく射し込む白をペースにした館内には、御嶽山の自然や山岳信仰に関する展示物が並びます。
やはりメインは2014年におきた御嶽山の噴火災害に関する展示物や映像。
さとテラス三岳は、御嶽山の自然や歴史を紹介するというより、あの噴火災害を決して忘れることがないようにと建てられた施設だと感じました。
中でも強いインパクトだったのは、中央のガラスケースに収められた被害に遭われた方の、噴火前の抜けるような青空の御嶽山を生き生きと登る写真と、その後の壮絶さを物語る火山灰にまみれた遺品の数々です。写真には「おとうさん」と添えられていました。
2014年9月27日、あの日たくさんの人たちが大切な「おとうさん」や「おかあさん」や「子供」や「おじいちゃん」「おばあちゃん」を突然奪われてしまったこと、そしていまだに行方不明なままの人がいることを、決して忘れてはいけないと思います。