横向温泉 中の湯旅館(閉館)


「横向温泉 中の湯旅館」について現地に伺ったところ今後の再開は難しく閉館と思ってください、長年のご愛好ありがとうございましたとのことです。

土湯峠周辺には多くの温泉が点在しています。その中の一軒、横向温泉中の湯旅館にお邪魔しました。

道路脇の案内看板を頼りに横道に入り、そのまま進んだ先にお宿はありました。建物の印象としてはパッと見ると鄙びた民家風の外観で、お宿の看板が無ければ二階建て民家そのものです。気のせいか屋根が多少傾いているようにも見えました。お宿の館内も鄙び雰囲気がたっぷりと漂っており、廊下壁の表示されている「温泉浴場」の木造り案内板、館内入口正面にあるご主人挨拶の「舌代り」が面白い。

肝心なお風呂は混浴浴槽が二つ、女性専用浴槽が一つの構成。女性浴室から混浴風呂に行き来は自由。混浴浴槽は4-5人ほどの「あつ湯」と、3人ほどの「ぬる湯」の二つに仕切られている。「あつ湯」は無色透明、やや表面が白っぽく濁りがかった湯からは、弱い油の臭いが感じ取れます。竹筒の湯口から常時、25L/min弱ほどの源泉が浴槽へ吐き出されていて41℃ほど。

小さな浴槽は体感30℃そこそこの湯が注がれていますが、隣の「あつ湯」浴槽から湯が流れ込むので35℃位になっていた。立寄り時には「ぬる湯」に6人がひしめきあって湯に浸かった。湯治客がいうには「ここのぬる湯が効く」との事。弱い金気臭のする湯、ギチギチ感あり。完全な湯治場で、小さな混浴浴槽に男女6人が浸かり、キノコの話しで盛り上がる。やはりこの手の湯治宿は宿泊して、お宿の雰囲気、お湯を充分に満喫してみたと思う。立寄りだけで良さが分かるには時間が足りないと思う。
(三昧・2005年10月)


子供の頃、親戚の湯治見舞いに行きそのまま滞在した秋田の自炊小屋も相当鄙びた印象があったけれど、ここもかなりの鄙びだった。今や貴重な程の佇まいに嬉しくなってしまう。ここ最近の秘湯ブームは逆にこういう方がウケるのかもしれない。

浴室は女性用、混浴用の二箇所。この二つの浴室には大雑把な仕切りしかなく最初は少し驚きましたが、脱衣所はきっちり分かれているし、女性浴室からは様子を見ながら混浴へ行けるので比較的気楽に湯浴みができました。

まずは女性用浴室へ。3人サイズの四角い浴槽には細々濁りの中に大量の鉄サビ色の湯花が舞う適温湯が満たされ、なかなかの溢れ出しとなっていました。湯口での鉱物系不思議臭に加え湯面からは仄かな金気臭も。キチキチと肌に引っかかり感のある湯です。浴室の窓を開けると目の前には原生林が広がり清々しいです。

お次は混浴へ移動。ここには二つに仕切られた長方形浴槽があり、片方が4~5人サイズの適温湯、もう片方が3人サイズの「ぬる湯」となっていました。「適温湯は女性湯と同じ湯だよ」と、湯浴み中のオジサンが教えてくれたのですが、こちらには女性側で見られた程の湯花はありません。

そして「中の湯」名物の「ぬる湯槽」です。竹筒より人肌よりも冷たく感じる湯+隣の適温湯からの流れ込みにより、人肌程度の湯温となっていました。わずかに何らかの鉱物系臭漂う透明湯です。引っかかり感のある印象でしたが、隣からの流れ込みも相当量混ざっているので、これは冷たい源泉そのものの浴感ではないかもしれないですね。

ここでジッと長湯をするワケですが、わずか3人程のスペースに6人がギュウギュウ詰め。最初はお婆ちゃん、私、三昧の3人だったのですが、あれよあれよという間にオバチャン1人、オジチャン2人が加わりました。皆、人が増えても嫌な顔せず、後から来る人あれば、隙間を空けて「入りな、入りな」という具合。

皆で円になりながらキノコやアケビに関する知恵袋が沢山飛び出します。アケビの話題など「へぇー!」と驚きの連続でしたよ。また、中の湯の湯治客のオジサンによると「最近配管を変えたから冷たい湯の出がとても良くなった、以前とお湯の感じが変わったが、元々はこんな湯なんだ」との事。そんな会話をしながら気がつけば1時間も湯に浸かっていました。ぬる湯ながら長湯が効いたのか、浴後はホカホカとなっていました。

ところで、ここの大女将(?)、小柄でテキパキ動いて明るく喋る、ちょっと印象に残る方でした。
(まぐぞー・2005年10月)

▼横向温泉 中の湯旅館 外観

▼懐かしい玄関の薪ストーブ

▼ご主人挨拶の「舌代り」

▼湯治場風情漂う館内

▼味わいある浴場案内

▼女性浴室

▼湯口

▼湯花漂うお湯

※混浴エリアは他のお客さんがいたので撮影なしです

横向温泉 中の湯旅館 データ

福島県耶麻郡猪苗代町大字若宮字中ノ湯甲2975
8時~18時
300円
訪問:2005年10月

横向温泉 中の湯旅館 温泉分析

中の湯 単純温泉(Na-HCO3) 泉温=? pH=6.3 溶存物質計=585mg Na=97.0(62.06) Fe2=0.5 HCO3=307.5(82.23) (S55.12.25)

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