ところで、利尻島を離れる前にこの話題を忘れちゃいけません。
106年ぶりに利尻島へ上陸したオスのヒグマですが、その後どうなったかといいますと、
実のところ私達が利尻島を訪問した8月下旬時点では、確実な消息を誰もわからない状態でした。ただ薄っすらと、その結末を暗示するような流れがありまして・・・。
まずは事の起こりは、今年の5月30日にヒグマのいないはずの利尻島で、その足跡が発見された事に始まります。その後も島内のあちこちで糞や足跡が見つかり、ついには6月15日無人カメラでその姿がとらえられました。画像に映し出された大きなオスヒグマを見たときは、島の人達はさぞや震え上がったことでしょう。
元々ヒグマのいなかった利尻島に、ヒグマが海を泳いで渡って来たのは実に106年ぶりのことで、この話題は全国の情報番組でも何度も取り上げられていました。テレビではコメンテーターが専門家に「クマの今後」を質問すると、「このヒグマはメスを求めて海を渡って来た可能性があるので、いないとわかれば再び海を渡って帰るでしょう」とのことでしたが・・・。
最初に無人カメラでその姿を確認されてからというもの、ヒグマは糞や足跡など痕跡を残しながら島のあちこちを移動。ただし、意図的なのか人間とは距離を置いて移動しているようだとのこと。
このころ島では丁度タケノコ狩りシーズンだったものの、クマへの対処方法がわからない島民の皆さんはどうしたらいいかわからず
「クマに会わなければいいんだ、よし今年のタケノコは諦めよう!」
と一斉に山に入るのをやめたそうです。
「だって俺たち、本道の人みたいにクマに慣れてないから。」と。(いやいや本道の人だって慣れてないと思うけど)
まぁ人間側もクマとの距離を置いたわけですね。
そしてその後・・・
最後にヒグマが無人カメラに映ったのが6月下旬だったか、その時のヒグマの姿は哀れにもガリガリにやせ細った姿だったそうで。
専門家によると、
「もうこのクマには体力が無く海を渡って帰ることは無理で餓死するのも時間の問題でしょう」と。
その言葉通り、その姿が映ってからしばらくしてプッツリと糞や足跡の痕跡も無くなってしまったとのこと。
利尻島は緑豊かで沢もあり、クマも十分生きていけるんじゃないかな?そのうち海を渡って帰るんじゃないかな?なんてのんきな事を思ってましたが。
その昔、この島ではキツネも絶滅してしまったそうで、海を渡る体力のある大きなオスヒグマさえも餓死してしまう、肉食動物にとって島という環境がどれほど過酷かということを知るできごとでした。
島の皆さんは「タケノコはダメだったけどキノコは行けるかなぁ?」「でもまだ死体が見つかっていないし。」「この山のどこかでひっそりと死んじゃったのかなぁ。」と。安堵する一方どこかでクマを憐れむ複雑な気持ちが垣間見れました。できることなら元気なうちに泳いで帰ってほしかったっていうのが本音でしょうか。
メスを求めて106年ぶりに海を渡ったガッツあるオスヒグマ。次に生まれてくるときは人間になるといい。きっとフロンティア精神に溢れた何か大きな事をする偉人になるに違いないから。
106年ぶりに利尻島へ渡ったヒグマのその後・追記
2018年10月31日のヤフーニュースで、ヒグマは海を渡って戻った可能性が高いと出ていました。ただ海を渡る体力も無いほどやせ衰えたヒグマのこと、おそらくは海を渡り切れず死んでしまったかもしれません。