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「ベトナム統一鉄道」地獄編~フエからサイゴンまでB寝台~

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フエでの楽しみの一つに、朝のフォン川公園散策がありました。

仕事をしていた頃には、朝の公園をのんびり散歩なんて考えもしなかったんですが、こうしてのんびり朝の空気に触れながら悠々と流れる川面を見ていると、とても心が癒されます。

 

 

この川岸で飲む朝のベトナムコーヒーがとても美味しかった。濃いコーヒーにたっぷりの練乳を入れるのがベトナムスタイルです。

ここのご夫婦が良い方で、朝から元気いっぱいにお客さんの相手をする女将さんと、てきぱきと働くご主人がいいコンビです。ここに集うお客さんはいつも同じ顔触れのようです。

初めて行った日の帰り際「ありがとう、じゃあ、またね」って日本語で言ったら「ニホンジン!?」って驚いていました。どうやらいつも来る日本人の常連さんもいるようですね。次に会った時は女将さんが嬉しそうに「二ホンジーン!」って私達のことを呼んでました。

 

さて、ベトナム統一鉄道フエ→サイゴンの希望する寝台券がなかなか取れず、当初の予定より3泊延長したフエですが、どうやらやっと脱出できそうです。

 

そうなんです、ようやく寝台券を取れる見込みが出ました!

 

とはいえ当初予定していた二段ベット(日本でいうA寝台)はしばらく満席続きで諦め、次に狙いを定めた三段ベッド(日本でいうB寝台)の下段なら取れそうだということで、さっそくフエ駅へチケット購入に向かいました。

ちなみに料金が高いがゆえに最後まで空いていた、ハイクラスの個室も2~3日前には満席になってました。おそるべし、ベトナム統一寝台列車人気!

 

前回のダナン→フエの記事でも触れましたが、ベトナム統一鉄道のサイトでは空席状況は確認できるものの、なんとベトナム国内に銀行口座を持っていなければネット購入はできず、直接駅に買いに行くか、旅行会社に代行を頼むしかありません。
 

ベトナム統一鉄道

 

というわけでフエ駅です。

 

チケット売り場には2~3人のお客さんしかなく、ほぼ待たずに購入できました。ちなみに外国人がチケット購入する際はパスポートの掲示を求められますが、前回持って行くのを忘れましたが、ファーストネームと誕生日を告げ購入できました。今回はしっかり持って行きましたよ~。

三昧のチケット購入のやり取りを見ていた次のお客さん(ベトナム人)が、ついには真横まで身を乗り出して「ジャパン?」「そうです、ジャパンです」「おーーっ、ジャパーン!」と満面の笑顔になっていました。ベトナムでは日本人と知ると喜んでもらえることが多いんで嬉しいです。

 

発券されたチケットはこちら。

 

当日、フエは生憎の雨でした。

本当なら最後にもう一杯、フォン川公園の女将さんのところでコーヒーをいただいて行こうと思ってましたが、雨でそれはできませんでした。雨だったのでフエ駅まではタクシーです。タクシーはもちろん、信頼のマイリンタクシーです。

 

駅舎正面左側、チケット売り場の奥に待合室がありました。

 

スタッフのお姉さんが「待合室はここよ」「あっちが乗り場よ」といろいろ教えてくれます。

 

ホームに出てからは入線してきた逆方面行きの列車を熱心に撮っていると、さきほどのお姉さんがすっ飛んできて「あれは違うわ、乗っちゃダメよ」と教えてくれます。

 

やがて私達の乗るサイゴン行きが入線してきました。

 

さきほどのお姉さんが私達が乗り込むのをジィーと見ています。

 

これほど大勢の旅行者がいる中で私達だけロックオンしているということは、よほど不安材料満載に見えたんでしょうか。

 

さて私達がこれからお世話になるB寝台は・・・、かなり年季の入った鄙び系車内で、お客さんは車両まるまるほぼオールベトナム人の完全アウェイ状態でした。私達は向かい合わせでB寝台の下段をふたつキープしたんですが、残る中段と上段の4名は当然のようにベトナム人です。このフエが始発ではないので4名は既に乗車済み、私達の予約した下段席でくつろいでいました。

 

これが下段です。下段にだけテーブルがあります。

 

中段・上段は狭すぎて体を起こせないので、座ってくつろいだり、食事をしたりする時は下段席を利用することになります。

日本人の感覚からすると自分の予約席以外に座るのはちょっと・・と思ってしまいますが、B寝台の構造上、もうこうするしかない状態です。

 

現に他の部屋を見ても就寝時以外は中段・上段の人達が下段に座って喋ったり、スマホを見たり、皆でトランプ(賭けかな?)したりしてました。

 

私達の利用した寝台スペースは三段ベット二つがひとつの部屋となっていました。日本のB寝台(あけぼのの場合)は記憶ではカーテンでしたが、この寝台車は部屋ごとに頑丈な扉を閉め6人専用の個室にすることができます。とはいっても就寝時以外は常に開けっ放しでしたが。そして個々のベッドごとのカーテンはありませんでした。まぁ、この6人の間ではプライベートは無い感じですね。

 

 

各段はとても狭く、下段でかろうじて背中を少し丸めて座れる程度、

 

中段は起き上がるのもままならない狭さ、上段にいたっては寝返りうつのが精いっぱいといった感じ。普通に過ごせるのは下段のみってとこでしょうか。

 

 

各ベッドの備品は枕と毛布です。これは全然匂いも湿り気もなく快適でした。コンセントはパッと見た感じ、下段の足元と上段の二か所にありました。

 

 

各ベッドには読書灯もありました。部屋全体の照明は上段付近にあり、このオンオフは上段の乗客だったお兄ちゃんに任せました。そして車両にあった給湯器です。これはほとんど使っている人を見ませんでした。中段にいた女性がカップ麺を作っていたんで、たぶんお湯は出るんだと思います。

 

 

洗面所と(この時はまだ平和だった)トイレです。このトイレが後に地獄の様相になります。

 

定刻より10分ほど遅れて、列車はゆっくりとフエを出発しました。

 

さぁいよいよ19時間の列車の旅がはじまります!

 

そうなんです。フエ→サイゴンは19時間もかかるんです。

 

フエ→ダナン間は一週間前に通ったばかりですが、水牛が点々とたたずむのんびりとした田園風景は相変わらずよかったです。

 

この海はベトナムの皆さんが「ランコー!ランコー!」と言ってバシバシ画像を撮っていたので、有名な名所なのかもしれません。

 

カーブのところでは乗ってる列車が見えました。結構長いんですね。

我家のルームメイトとなるベトナム人は男性三人女性一人でした。まずは男性三人組。この三人は電気工事の職人さんで、年齢は30代~40代と思われる体格のいい親方と、20代前半の弟子と思われる青年、そしてまだ高校生くらいの見習い君です。自己紹介はなかったんですが、見ていてその関係がよくわかりました。

親方が下の二人をいろいろ仕切り、青年が見習い君を面倒見るといった構造です。青年は見習い君のみならず、ベトナム寝台車初体験の私達の面倒も見てくれました。ベッドに置かれていた毛布が形状的にどう見てもカーテンにしか見えず使い方を迷っていたら、スマホの翻訳で「毛布」と教えてくれたり、寝る様子を再現してくれたりしました。一番若い見習い君はいつもニコニコしたちょっとお調子者っぽい感じで、明るい時間帯はほぼ三昧の隣に並んでスマホいじりです。

そしてもう一人は中段にいた、たぶん私と同年代くらいの女性ですが、彼女はちょっと気の毒でした。とにかく乗り物に弱い体質のようで、終始下段に座って吐きっぱなし。これだけ吐くと相当辛いだろうな・・というまさに嘔吐が止まらない状態です。

 

フエを出発してすぐにサービスの昼食が配られました。親方が人数分のお弁当を受け取り、皆で下段に座っていただきます。お弁当は温かで美味しかったですよ。一緒についてきたピクルスも甘酸っぱくておいしかったです。コーラは別に買ったものです。

その間も女性は相変わらずで、当然お弁当なんか食べられずグッタリしていました。食事中はみんなに気をつかって吐くのを我慢していたようで、中段で横になりジッと耐えていたようです。やがて少し時間が経ちちょっとだけ吐き気も落ち着いたのか、車内の給湯器でカップ麺を作って食べましたが、すぐにまた気持ち悪くなってしまい再びの嘔吐。そして時間を空けて再度復活し、今度は車内販売のトウモロコシを食べるも再び嘔吐。もう、ずーっとこの繰り返しです。

その後いくら経っても一向に吐き気は止まらず、背中をさすってあげたり、親方がビニール袋を取りに行ったり。こうなるともうグッタリ過ぎて中段に登るのも困難に見え、三昧が女性と席を交換することに。移動した三昧によると、中段はとても狭く圧迫感があって、下段より揺れるし、これは人によっては気持ち悪くなるとのこと。

その後下段に移った女性は相変わらず吐き続け、やがて疲れ切ってぐっすりと眠っていました。

 

やることないんで、私もただひたすらゴロゴロ寝てます。

 

いつの間にか眠り込んでしまい、親方に「ディナー!」と起こされます。

 

目の前には昼とほぼ同じようなお弁当が用意されていました。お弁当の近くに美味しそうな笹餅が三つあったんで、てっきりこれもお弁当のセットかと思い食べようとしたんですが、青年に「あーっ、それ俺達の!俺達の!」と全力で取り返されてしまいました。どうやら車内販売で買ったみたいです。笹餅、食べたかった・・。(後にどうしても食べてみたくて、別の所で似たようなものを買ったんですが、その中身は全然餅じゃなかった。)

ディナーの後はすることもないんで寝るだけですが、うちの部屋の若い兄ちゃん二人をはじめ、他の部屋からもあちこちからスマホの大音響が聞こえるんです。ベトナムって人前でもイヤホンなんか使わず、老若男女ほぼ全員好き勝手に大音響で音楽聞いたりテレビみたりするんです。

もー、これがうるさいのなんのって。

それぞれが大音響を流して、そりゃもう、もの凄い騒音列車でしたよ。

 

さらに暗くなるとチョロチョロと壁を這い回る奴らが登場。

最初「あっゲンゴロウみたいな虫がいる」なんて思ったんですが、三昧が「ゴキブリだよ、ゴキブリ!」と夢を打ち砕くひとこと。まぁ小型だったんで別にいいんですが、チョロチョロと20回以上は姿を見ました。もしかしたら寝ている間に髪の毛に2~3匹潜り込んだかも。

 

また、この列車のトイレが凄かった。

 

車両の前と後ろに洋式トイレがあるんですが、本来ならボタンを押すと蓋がバカンと空いて水と共にウンチや尿が排出されるんですが、その開閉がうまくいかずブツの漂う茶色い汚水が溜まる一方。しかも列車が激しく揺れるもんだか、らビシャンビシャンと便槽から溢れまくり足元は汚水の海。

そして更に驚くことにその便槽に車掌さんがモップを突っ込んで(おそらく蓋を物理的に開閉させるため)、そのまま車内の床を拭きはじめるじゃありませんか。挙句にそのモップの水分(というか便所汁)を飛ばすために勢いよくグルグルと回転させるもんだから、

例のよろしくない便所汁がビシャシャシャッと飛び散る飛び散る!

近くにいた私の服にもビシャビシャとかかりました。

さらに、掃除をしていた車掌さんが(当然ノックはせず)トイレの扉をバーン!と勢いよく開けたら、なんと洋式トイレの上にズボンを脱いだオジサンが小鳥のように便器の上に乗っかって用を足してましたよ。車掌さんと、その隣にいた私、そして小鳥になったオジサン、おそらく5秒ほど沈黙のまま見つめあい、車掌さんは無言のまま表情一つ変えず再び扉をバーンと閉めてました。

悪夢はまだまだ続きます。中段や上段に上るとき、どうしても下段の端に足を乗せるんですが、気が付けば白いシーツの端っこには茶色い足跡がペタペタとたくさんついています。なんでだろう?と見ると、なんと若い兄ちゃんふたりとも、裸足でトイレとか行ってるんですよね。うお~っっこの茶色い染みはまさか便所汁か!?

しかも兄ちゃんたち寝相が悪くて、上段からはしょっちゅうスマホとか歯ブラシとか毛布とか、いろんなものが落ちてくるし。まぁスペースが狭すぎるってのもあるんですが。

更にこの部屋の扉、バーンと強めに閉めると何かの弾みで内側から意図しない鍵がかかってしまうようで、誰かが夜中にトイレに行こうものなら当然鍵がかかり、カリカリカチャカチャ扉を開けようと悪戦苦闘する音で目が覚めます。しかも内側から鍵を開けてあげようにもコツがいるようで開けるのに悪戦苦闘、最後はいつも寝台車に慣れているっぽい親方がムックリと起きて扉を開けていました。

その後、深夜3時頃だったか、まだ真っ暗な中、親方が青年と見習い君を起こす声で目が覚めました。見るとヘルメットを被り、にこにこ顔だった見習い君もキリッとした表情に変っています。大量の工具を持ち三人は夜明け前の駅に颯爽と降りてゆきました。きっと彼らとはもう一生合う事はないんだなぁ。騒々しかったけど、楽しかったな。

三人と入れ替わるようにして次に乗り込んで来たのはベトナム人カップルです。室内に入った途端、例によって大音響でスマホです。夜中の3時だろうと関係ありません。この時ばかりは「どうかベトナム人からスマホを取り上げてください」って神様にお願いしました。

ところでこの列車、フエ出発時点で既に10分ほど遅れ、その後もちょいちょい遅れ、私の知る限り最大で40分は遅れていたと思います。それを挽回するためなのか、夜中は体がビョンビョントランポリンのように跳ね上がるくらいスピードをあげたり、駅の停車時間を短縮したり。最終的にサイゴンに着いた時はほぼ定刻通りだったという。

サイゴン到着時はまだ毛布にくるまりウトウトしていたんですが、例の車掌さんが激しくノックを連打したと同時にバーンと扉を開け、グルーっと部屋を見回し降りろといわんばかりに顎で合図をしてきます。

それに従いモソモソと下車準備をする私達。あの具合の悪かった女性もぐっすり眠れたようで、朝は顔色も良く元気そうに笑顔を見せていました。

 

外を見るとあまり天気がよくないのか、ねずみ色がかっても見えるサイゴン駅のホームが見えました。

 

「サイゴーン、サイゴーン」なんていう旅情あふれるアナウンスも一切ありませんでした。

 

終わった・・

 

19時間が、やっと終わった。

 

 

下車時に二段ベッド寝台も見てみたんですが、そちらは外国人観光客が多く、部屋は明るく、上下段ともビックリするほど広々で快適そうでした。次に乗るなら二段ベッドだな。そしてツインルームのハイグレードな個室もありました。

 

この列車の旅は時間もお金もかかるし、飛行機の方が断然効率的だと思います。乗車中は「なんだ、酷い列車だなぁ」なんて思ったりもしましたが、いま思い返すと、やっぱり乗ってよかったなぁ。

 

いよいよやって来たホーチミンの街は、

 

生憎の霧雨に煙っていました。

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