知床自然センターで羅臼岳入山前にヒグマについて学ぶ(熊よけスプレーのレンタルも)

このページでは広告を載せています。

この日はいよいよ待ちに待った晴れ予報の明日に向け、知床まで移動します。そうです北海道の山歩き・第二段は知床の羅臼岳を歩く予定です。

羅臼岳といえばヒグマとの遭遇率が他の山域と比べて桁違いに高く、そのため本州の人間は当たり前のように行っている行為にも制限がある、いわゆる「知床ルール」というものも存在するので、その点も含めてビジターセンター(知床自然センター)で知識を得てから入山しようと思います。

 

午後になると予報通り天気は回復し、

 

知床に着く頃には久々の青空が広がっていました。

 

知床自然センター

Googleマップでみる

世界遺産の知床は日本人だけではなく海外の人にも大人気のようで、知床自然センターは大勢の人で賑わっていました。ここでもやっぱり中国語圏のお客さんが多かったですね~。さらに今日は道内小学生の夏休み最後の土曜日ですから、駐車場はほぼ満車で誘導員さんが忙しく動き回っています。

 

知床自然センター内には最近のヒグマ目撃情報が掲示されていました。これを見るとほぼヒグマ活動期の7月に集中しているんですが、8月に入ってもチラホラと目撃されているようです。

ここで一人の男性職員にいろいろお話を伺いましたが、ラッキーなことに羅臼岳にかなり精通しておられ、後に登場するヒグマ撃退スプレーの冊子にもコメントを載せている方でした。また、知床自然センターにはヒグマに対するマニュアルも置かれているで、入山前にぜひ訪問される事をおすすめします。

羅臼岳の高原地図を見ながら、明日は岩尾別温泉登山口から山頂までのピストンを予定している事を伝え、最近の悪天候で登山道は荒れていないかを聞くと問題なしとの事。

 

羅臼岳入山におけるヒグマ注意点

「このコースはヒグマの目撃が多いようですが他のコースの方が遭遇率は少ないのですか」と聞くと、このコースを利用する登山者が圧倒的に多いので目撃例も多くなるだけのこと、他のコースでもヒグマはいますよ、とのこと。

ただ560m岩峰と650m岩峰はヒグマの大好きなアリが多く、それを食べに来るので特に目撃例が多いのだそうです。 

 

▲実際に羅臼岳を歩いた時の岩峰付近です。なんてことない樹林帯で、気が付かずに通り過ぎることも多いと思います。中にはタイミング悪くヒグマのお食事中に遭遇して、1時間以上足止めをくったハイカーさんもいたとか。

 

ヒグマに前もって人間の存在を知ってもらう

一番大事なのは、ヒグマに人間の存在を前もって知らせる事で、時々手を叩いたり声を出すといいみたいです。

そして愛用者も多く我家も使用している「クマ鈴」ですが、これもいいんですが逆に熊が接近するガサガサ音を聞き逃す場合もあるので鈴ばかりに頼るのは・・・って感じでした。そういえばクマについての著書を出版している米田氏も著書の中で、ラジオなどで音を出しっ放しにすると逆にクマの接近に気が付くのが遅れる事を書かれていましたっけ。

 

ヒグマをひきつけないため食品の扱いには細心の注意を

そしてもうひとつ重要なのが、ヒグマを引き寄せない事で、ヒグマは食べ物の臭いに貪欲で、いったん美味しそうな臭いをキャッチすると、例え複数の人がいても突進してしまうんだそうです。特にジュースなどの甘い匂いに目がないそうですよ。

これは現地で売っている地図に記載されているのですが、知床の山を登るにあたり携帯トイレ持参は勿論ですが、山行中の食事場所にも気をつかう必要があって、テント場⇔100m⇔フードロッカー⇔100m⇔食事場所という具合にそれぞれ100m間隔を開けなくてはならないようです。特にテントの中で飲食をするとヒグマに荒らされる(襲われる)危険があるので、これは避けるべきのようですね。

 

▲実際に羅臼岳に設置されていた頑丈なフードロッカー。これほどまでに食品に気を付けています。

最近「山ごはん」ブームで、関東近郊や北アルプスでは食材を大量に持ち込んで料理を行うハイカーも見かけますが、知床ではこれはもう「ヒグマホイホイ」な行為なんだと思います。例えその時大丈夫でも、食べ物を落としたり残り香に引き寄せられて、後の人に迷惑をかける可能性もあります。

山行中にどうしても食べ物を持ち歩きたい場合は、知床自然センターでフードコンテナのレンタルも行っています。

 

知床では山の中に限らず、道の駅でも
「食べ物のにおいはヒグマを引き寄せ危険です。車外での調理や調理器具・食材の放置はご遠慮ください。」
と掲示されています。

その為かわかりませんが、これを書いている現時点で北海道の山は五座登ったのですが、ヒグマのいない利尻山を除く四座では腰を据えて大々的に飲食するハイカーさんは見かけませんでした。

本州では定番のバナーで煮炊きするなんて人もなく、そのぶんとても軽装なんですよね。みなさん、自然がより近い環境で暮らしているからか、とてもシンプルなハイキングをされている印象でした。

 

観光客が与えたエサによるヒグマの悲劇~エサやりがクマを殺す~

現地で懸念されているのが、観光客の無知によってヒグマのみならず、野生動物と人間との境界線が決壊してしまう事のようです。 

 

知床を訪れた人なら一度は目にすると思いますが、道の駅の各所には、こんなヒグマに関する掲示がされています。

 

“ コードネーム97B‐5、またの名はソーセージ。初めて出会ったのは1997年秋、彼女は母親からはなれ独立したばかりだった。翌年の夏、彼女はたくさんの車が行き交う国立公園入口近くに姿を現すようになった。その後すぐ、とんでもない知らせが飛び込んできた。観光客が彼女にソーセージを投げ与えていたというのだ。それからの彼女は同じクマとは思えないほどすっかり変わってしまった。人や車は警戒する対象から、食べ物を連想させる対象に変わり、彼女はしつこく道路沿いに姿を見せるようになった。そのたびに見物の車列ができ、彼女はますます人に慣れていった。
我々はこれがとても危険な兆候だと感じていた。かつて北米の国立公園では餌付けられたクマが悲惨な人身事故を起こしてきた歴史があることを知っていたからだ。我々は彼女を必死に追い続け、厳しくお仕置きした。人に近づくなと学習させようとしたのだ。しかし彼女はのんびりと歩き続けた。

翌春ついに彼女は市街地にまで入り込むようになった。呑気に歩き回るばかりだが、人にばったり出会ったら何が起こるかわからない。そしてある朝、彼女は小学校のそばでシカの死体を食べ始めた。もはや決断の時だった。子供たちの通学が始まる前にすべてを終わらせなければならない。私は近づきながら弾丸を装填した。スコープの中の彼女は、一瞬、あっというような表情を見せた。そして叩きつける激しい発射音。ライフル弾の恐ろしい力。彼女はもうほとんど動くことは出来なかった。瞳の輝きはみるみるうちに失われていった。

彼女は知床の森に生まれ、またその土に戻っていくはずだった。それはたった1本のソーセージで狂いはじめた。何気ない気持ちの餌やりだったかもしれない。けれどもそれが多くの人を危険に陥れ、失われなくてもよかった命を奪うことになることを、よく考えて欲しい。

‐人とクマがうまくやっていく道はあるはずだ。‐

(知床財団)”

 

そして、このコードネーム97B-5の悲劇的な最期の姿が掲示されています。

 

 

この掲示は英語や中国語バージョンもあり、個室トイレの全てに貼られ観光客が目にしやすい場所のあちこちにも掲示されています。この悲劇をこれ以上繰り返さないために知床は本気なんだな、って感じました。

そしてこのヒグマだけが捕殺をされた哀しい一頭ではなく、実際のヒグマの年間捕殺数は、おそらく多くの人の想像をはるかに超える数だという事を知った方がよいと思います。 

 

おねだりキツネ

キツネに関しても、こんな掲示がされています。

 

「おねだりキツネにご用心」って書いてあり、あたかもキツネが悪いようですが彼らを「おねだりキツネ」にしてしまったのは人間なんですけどね。

 

おねだりキツネは知床の道路わき、道の駅、そして温泉宿の駐車場でも頻繁にみかけました。温泉宿に「随分慣れてるキツネがいるけど餌付けしてるの?」と聞くと、「いやいや、こちらは餌やりを見つけ次第注意してるんですが、いい写真を撮りたいがために餌をあげる観光客がいて」と、ほとほと困っている様子でした。

観光客のみならず登山客の中にも餌やりをする人がいると聞いて、山に入る人はこういう事には敏感なハズなのにと、ちょっとびっくりしました。

 

知床自然センターではクマスプレーをレンタルできます

話はヒグマに戻ります。どんなにヒグマを回避する手段をとったとしても、やっぱり予測に反する突発的な事故的事例もあるようで、最終的な(あきらかに攻撃されている場合の)対処として、いよいよクマスプレーの登場だそうです。

クマスプレーは「車でいうエアバック的存在と思っていただければ」との事です。知床自然センターでは24時間1000円ほどでレンタルもしています。購入もできますが、現地購入はなんと1本1万円以上するんですよ。我家は勿論クマスプレーをレンタルしましたが、お守りじゃないけれど、これを持っていると山行中の安心感が全然違いました。一回ポッキリの入山なら現地レンタルで十分だと思います。

 

すっかり長くなってしまいましたが「ヒグマ、ヒグマって言うけれど、滅多にいるもんじゃないんでしょ?」って最初は思ってました。ところがですよ、

鹿がビィっと鳴きながら駆け上がって来た斜面下をふと見たとき・・・

 

かなりの遠目でほんの2~3秒チラッと見かけただけですが、このとき「知床って本当にヒグマが近い存在なんだっ」て思いました。  

ヒグマの習性を学んだばかりの後で、そりゃもう全身の血の気が引くほどゾっとしました。(もうここは人間のテリトリーじゃないんだ)慌てて立ち去りながら(もし羅臼岳の登山道にいたらどうしよう、もし羅臼岳の登山道にいたらどうしよう)そんな恐怖が頭の中をぐるぐる巡っていました。

 
 

本日は明日の羅臼岳に備えて、岩尾別温泉登山口に移動します。途中、数頭の鹿さんがゆーーっくり前を横切って行きました。

さっきヒグマを見かけて一刻も早くココを立ち去りたいという、ホラー映画の登場人物な三昧は「なんで知床の鹿は歩くの遅いの!?」とかなりテンパっております。どいてもらおうとクラクションをプっと短く鳴らしてみても効果なく、ゾロゾロ次々と出て来る鹿たち。「知床の鹿はなんで逃げないの!?」と道路を塞がれいよいよ焦りモード。

 

知床自然センターに今度はエゾシカを学びに行きましょうかね。

タイトルとURLをコピーしました