晴れたら山、雨なら温泉、さぁ今日はどっち?

はしご湯のすすめ・日本放浪編

日本半周・2018

羅臼岳入山前にビジターセンターでヒグマについて学ぶ

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この日はいよいよ待ちに待った晴れ予報の明日に向け、知床まで移動します。そうです北海道の山歩き・第二段は知床の羅臼岳を歩く予定です。羅臼岳といえばヒグマとの遭遇率が他の山域と比べて桁違いに高く、そのため本州の人間は当たり前のように行っているアノ行為にも制限がある、いわゆる「知床ルール」というものも存在するので、その点も含めてビジターセンターで知識を得てから入山しようと思います。

 

午後になると予報通り天気は回復し、

 

知床に着く頃には久々の青空が広がっていました。

世界遺産の知床は日本人だけではなく海外の人にも大人気のようで、ビジターセンターは大勢の人で賑わっていました。ここでもやっぱり北京語圏のお客さんが多かったですね~。さらに今日は道内小学生の夏休み最後の土曜日ですから、駐車場はほぼ満車で誘導員さんが忙しく動き回っています。

 

ビジターセンター内には最近のヒグマ目撃情報が掲示されていました。これを見るとほぼヒグマ活動期の7月に集中しているんですが、8月に入ってもチラホラと目撃されているようです。

ここで一人の男性職員にいろいろお話を伺いましたが、ラッキーなことに羅臼岳にかなり精通しておられ、後に登場するヒグマ撃退スプレーの冊子にもコメントを載せている方でした。また、ビジターセンターにはヒグマに対するマニュアルも置かれているで、入山前にぜひ訪問される事をおすすめします。

羅臼岳の高原地図を見ながら、明日は岩尾別温泉登山口から山頂までのピストンを予定している事を伝え、最近の悪天候で登山道は荒れていないかを聞くと問題なしとの事。

そしてこのコースはヒグマの目撃が多いようですが他のコースの方が遭遇率は少ないのですかと聞くと、このコースを利用する登山者が圧倒的に多いので目撃例も多くなるだけのこと、他のコースでもヒグマはいますよ、とのこと。ただ560m岩峰と650m岩峰はヒグマの大好きなアリが多く、それを食べに来るので特に目撃例が多いのだそうです。タイミング悪く1時間以上足止めをくったハイカーさんもいたとか。

そして一番大事なのは、ヒグマに人間の存在を前もって知らせる事で、時々手を叩いたり声を出すといいみたいです。そして愛用者も多く我家も使用している「クマ鈴」ですが、これもいいんですが逆に熊が接近するガサガサ音を聞き逃す場合もあるので鈴ばかりに頼るのは・・・って感じでした。そういえばクマについての著書を出版している米田氏も著書の中で、ラジオなどで音を出しっ放しにすると逆にクマの接近に気が付くのが遅れる事を書かれていましたっけ。

そしてもうひとつ重要なのが、ヒグマを引き寄せない事で、ヒグマは食べ物の臭いに貪欲で、いったん美味しそうな臭いをキャッチすると、例え複数の人がいても突進してしまうんだそうです。特にジュースなどの甘い匂いに目がないそうですよ。

これは現地で売っている地図に記載されているのですが、知床の山を登るにあたり携帯トイレ持参は勿論ですが、山行中の食事場所にも気をつかう必要があって、テント場⇔100m⇔フードロッカー⇔100m⇔食事場所という具合にそれぞれ100m間隔を開けなくてはならないようです。特にテントの中で飲食をするとヒグマに荒らされる(襲われる)危険があるので、これは避けるべきのようですね。

最近「山ごはん」ブームで、関東近郊や北アルプスでは派手に料理を行うハイカーも見かけますが、知床ではこれはもう「ヒグマホイホイ」な行為なんだと思います。例えその時大丈夫でも、食べ物を落としたり残り香に引き寄せられて、後の人に迷惑をかける可能性もありますもん。山行中に食べ物を持ち歩きたい場合は、ビジターセンターでフードコンテナのレンタルも行っています。

ちなみに知床では山の中に限らず、道の駅でも

食べ物のにおいはヒグマを引き寄せ危険です。車外での調理や調理器具・食材の放置はご遠慮ください。

と記されています。

その為かわかりませんが、これを書いている現時点で北海道の山は五座登ったのですが、ヒグマのいない利尻山を除く四座では腰を据えて大々的に飲食するハイカーさんは見かけませんでした。特に本州では定番のバーナーをゴォォォーっと響かせて煮炊きするなんて人はなく、そのぶんとても軽装なんですよね。みなさん、自然がより近い環境で暮らしているからか、とてもシンプルなハイキングをされている印象でした。

また現地で懸念されているのが、観光客の無知によってヒグマのみならず、野生動物と人間との境界線が決壊してしまう事のようです。

 

知床を訪れた人なら一度は目にすると思いますが、道の駅の各所には、こんなヒグマに関する掲示がされています。

“ コードネーム97B‐5、またの名はソーセージ。初めて出会ったのは1997年秋、彼女は母親からはなれ独立したばかりだった。翌年の夏、彼女はたくさんの車が行き交う国立公園入口近くに姿を現すようになった。その後すぐ、とんでもない知らせが飛び込んできた。観光客が彼女にソーセージを投げ与えていたというのだ。それからの彼女は同じクマとは思えないほどすっかり変わってしまった。人や車は警戒する対象から、食べ物を連想させる対象に変わり、彼女はしつこく道路沿いに姿を見せるようになった。そのたびに見物の車列ができ、彼女はますます人に慣れていった。
我々はこれがとても危険な兆候だと感じていた。かつて北米の国立公園では餌付けられたクマが悲惨な人身事故を起こしてきた歴史があることを知っていたからだ。我々は彼女を必死に追い続け、厳しくお仕置きした。人に近づくなと学習させようとしたのだ。しかし彼女はのんびりと歩き続けた。

翌春ついに彼女は市街地にまで入り込むようになった。呑気に歩き回るばかりだが、人にばったり出会ったら何が起こるかわからない。そしてある朝、彼女は小学校のそばでシカの死体を食べ始めた。もはや決断の時だった。子供たちの通学が始まる前にすべてを終わらせなければならない。私は近づきながら弾丸を装填した。スコープの中の彼女は、一瞬、あっというような表情を見せた。そして叩きつける激しい発射音。ライフル弾の恐ろしい力。彼女はもうほとんど動くことは出来なかった。瞳の輝きはみるみるうちに失われていった。

彼女は知床の森に生まれ、またその土に戻っていくはずだった。それはたった1本のソーセージで狂いはじめた。何気ない気持ちの餌やりだったかもしれない。けれどもそれが多くの人を危険に陥れ、失われなくてもよかった命を奪うことになることを、よく考えて欲しい。

‐人とクマがうまくやっていく道はあるはずだ。‐

(知床財団)”

 

そして、このコードネーム97B-5の悲劇的な最期の姿が掲示されています。

 

 

この掲示は英語や中国語バージョンもあり、個室トイレの全てに貼られ観光客が目にしやすい場所のあちこちにも掲示されています。この悲劇をこれ以上繰り返さないために知床は本気なんだな、って感じました。

そしてこのヒグマだけが捕殺をされた哀しい一頭ではなく、実際のヒグマの年間捕殺数は、おそらく多くの人の想像をはるかに超える数だという事を知った方がよいと思います。

キツネに関しても、こんな掲示がされています。

 

「おねだりキツネにご用心」って書いてあり、あたかもキツネが悪いようですが彼らを「おねだりキツネ」にしてしまったのは人間なんですけどね。

 

おねだりキツネは知床の道路わき、道の駅、そして温泉宿の駐車場でも頻繁にみかけました。温泉宿に「随分慣れてるキツネがいるけど餌付けしてるの?」と聞くと、「いやいや、こちらは餌やりを見つけ次第注意してるんですが、いい写真を撮りたいがために餌をあげる観光客がいて」と、ほとほと困っている様子でした。観光客のみならず登山客の中にも餌やりをする人がいると聞いて、山に入る人はこういう事には敏感なハズなのにと、ちょっとびっくりしました。

話はヒグマに戻ります。どんなにヒグマを回避する手段をとったとしても、やっぱり予測に反する突発的な事故的事例もあるようで、最終的な(あきらかに攻撃されている場合の)対処として、いよいよクマスプレーの登場だそうです。クマスプレーは「車でいうエアバック的存在と思っていただければ」との事です。ビジターセンターでは24時間1000円ほどでレンタルもしています。購入もできますが、なんと1本1万円以上するんですよ。我家は勿論クマスプレーをレンタルしましたが、お守りじゃないけれど、これを持っていると山行中の安心感が全然違いました。

すっかり長くなってしまいましたが「ヒグマ、ヒグマって言うけれど、滅多にいるもんじゃないんでしょ?」って最初は思ってました。ところがですよ、

鹿がビィっと鳴きながら駆け上がって来た斜面下をふと見たとき・・・

 

だいぶ遠目でほんの数秒見かけただけですが、このとき「知床って本当にヒグマが近い存在なんだっ」て思いました。何か美味しい草でも探していたんでしょうか、熱心に草むらに頭を突っ込んでました。

 

本日は明日の羅臼岳に備えて、岩尾別温泉登山口に移動します。途中、鹿さんがゆっくり前を横切って行きました。足が黒いハイヒールを履いているみたいでかわいいです。

 

知床の鹿さんは、かなりノンビリしてますね。

 

岩尾別登山口には地の涯という温泉宿があり、舗装部分(画像に写っている場所)はこのお宿の駐車場になりますが、はしっこに未舗装部分があって登山客用駐車場となっています。ただスペースは約5台と登山口にしては、おそろしく停められる台数が少ないです。さらに登山口方面へ進むと木下小屋という山小屋があり、その前にも約5台ぶんの駐車スペースがあります。それでもやっぱり百名山の登山口駐車場としては、ありえないくらい少ないですね。じゃあその他多くの車はどうするかといいますと、皆さん路駐をしていました。というか、もう路駐するしかない状況で、とある施設で伺ったのですが、これはもう暗黙の了解のようになっているようです。

 

地の涯の駐車場横には登山者向けに二つのトイレが設置されていました。明るい茶色の方は小林製薬が寄贈したバイオトイレで、綺麗でまったく臭いがありません。ただし大小にかかわらず男性も女性も必ず腰かけて使用しなくてはならないのですが、その便座位置が遠くて、後ろ向きに勢いをつけてお尻を乗せないと届かない感じでした。背の高い人なら難なく座れると思いますが。もうひとつのトイレは臭いがきつくボットンタイプじゃないかな?と思います。扉を開けた途端のものすごい臭いに怖気づいて利用していないのでわかりませんが。

 

そして時間帯によっては地の涯のトイレも貸していただけます。地の涯ではクマスプレーや山バッチも販売していました。

 

せっかくなので地の涯で立ち寄り湯もお邪魔しました。雰囲気ある内湯と、豪快掛け流しの露天風呂がとても良かったです。

この日は登山者用駐車スペースで車中泊です。最初は車中泊していいのか迷ったのですが、先客の男性が「確認したらいいってよ~」という事で、一晩お邪魔しました。我家が到着した夕方頃はまだギリギリあと1~2台停められましたが、すぐ満車になってしまいました。その後も続々と車はやってきて路駐も徐々に車が増えつつあります。とはいえ南北アルプス登山口各所の熾烈な場所取り合戦に比べると、北海道の山はずいぶん平和だなぁと感じました。北海道の皆さんに夏の中房温泉や芦安の凄まじい大混雑ぶりを一度見てほしいなぁ。

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