【松例祭】出羽三山(羽黒山)の年越し神事

2016年の大晦日は山形県の羽黒山で行われる伝統的年越し神事、松例祭へ行ってきました。松例祭は今回で2度目の訪問です。

松例祭の行われる羽黒山の出羽三山神社はこちら。(Google Mapでみる)

松例祭は、出羽三山神社の門前町「手向地区」から毎年二人の最長山伏「松聖」が選ばれ、その二人が百日行の満願となる大晦日に、どれだけの験力がついたかを神事で競い合うものです。実際に体を張って競うのは、手向地区の若者衆や験者の皆さんです。みんなのトップにたつ松聖は指導力も重要な験力って事でしょうか。

 

実は松例祭はとても複雑な神事と行事の混合で、たぶん数回見学しても全てを理解する事は難しいと思います。実際、2度目の今回ですら、よくわからないことだらけでした。松例祭は「3年みないとわからない」と言われています。

ただ、なんにも知識がなくても、その独特の雰囲気と出羽で継がれる伝統行事は見ているだけで圧倒されるし、訪問してその臨場感と独特の空気感に身を置くだけでも貴重な経験になりましたよ。これをきっかけに出羽の文化に興味を持って本も読むようになりました。

 

それにしても今年は雪がありません。雪を覚悟していたので、なんだか拍子抜け。

 

田んぼを闊歩する白鳥くんも「餌探しが楽でいい」と言っています。

 

松例祭会場に一番近い「羽黒山山頂駐車場」をキープ

2016年大晦日、出羽三山神社に一番近い「羽黒山山頂駐車場」に到着したのは17時頃。この頃はまだ少し駐車スペースに空きはありましたが、早くもだいぶ埋まりかけています。(むむむ・・・今年は随分とお客さんが多いなぁ~)

駐車場は大きくわけて出羽三山神社に近いエリア(羽黒山山頂駐車場)に約180台ほど、徒歩で10分くらい離れたスキー場横に約230台ほどがあります。

Google Mapで見る位置関係

羽黒山 山頂駐車場(Google Mapでみる)
スキー場エリアの駐車場(Google Mapでみる)羽黒山山頂駐車場⇔スキー場エリア駐車場は頻繁に無料シャトルバスが運行しています。

松例祭は寒い中での長丁場になるので神事の合間に車へ戻り休憩したり、気温に合わせて防寒着を足したり、長くつに履き替えたりもしたいとこ。そんなワケでぜひとも一番近い「羽黒山山頂駐車場」をキープしたいのです。

ちなみに駐車場ではスタッフのみなさんが、停める場所を的確に指示してくれます。松例祭では会場の玄関口でもある駐車場を大勢の人が歩き回っているので、やみくもに駐車スペースを探し回るのは危険。なんといってもスタッフさんは「あそこは停めやすくなってるから」とか「あそこがもうすぐ空きそうだから」とか、現状をよく知ってます。

公共バス利用に関しては「羽黒町観光協会の公式サイト」に会場までの時刻表が掲載されると思います。

 

2016年大晦日の羽黒山はとても穏やかな天候でした

あまり寒くなく、雪も少なく「こんなに雪が無いのは初めて」と、皆が口を揃えて言うほど穏やかな大晦日です。前回の2009年は結構な防風雪でとにかく寒くて凍えた記憶が強かったです。吹雪くたびに「おっ、いいぞー!」なんて、みんなで気分をあげてましたが。

 

こんなに穏やかでも鏡池はしっかりと氷に覆われていました。

 

神事の予定表

境内には神事の予定表が掲示されています。「羽黒町観光協会の公式サイト」にもスケジュールを記したパンフレットが載るはずなのでどうぞ。

前回は「綱まき」「まるき直し」「砂はき渡し」「検縄」「砂はき」「験競べリハーサル」「験競べ本番」「国分け神事」を見学したので、今回はそれ以外をじっくりと見ようと思います。特に前回見逃した大松明引きは絶対に外せません!

松例祭で悩ましいのが、祭りのクライマックスでもある「験競べ(本番)」と「大松明引き」が時間的に被るってことです。

その対策も兼ねるのか、このスケジュール表には載ってないんですが、「験競べ」にはリハーサルもあります。写真を撮りたい人は堂々と撮影ができる験競べリハーサルを見てから大松明引きの見学のパターンが多いようです。

 

容赦ない奪い合い「綱まき」は参加すればより楽しい!

今回は参加しませんでしたが15:00から行われる「綱まき」は、とっても楽しくエキサイティングな行事なんです。

はて?「綱まき」とは?2009年に参加した「綱まき」の様子を紹介させていただきます。

「綱まき」はツツガムシをかたどった大松明(↑)を切り刻んで撒きます。これを取れた人は、家に飾っておけば一年魔よけになるし、なにかと良い事があるそうな。

この神事が凄いんです。

 

プォォ~プォォ~と法螺貝の音と共に松聖が登場。(2009年の様子)

 

二匹のツツガムシ君の上に「位上方」「先途方」それぞれの松聖が乗り綱を撒き始めると同時に戦いのゴングが鳴ります。(実際ゴングは鳴らないけれど、それ位の勢い)

 

うぉーーーっっ!ギゃーっっ!こっち!こっちーー!!我先にと奪い合う民衆。

・・・しかし・・

この「綱まき」の恐ろしさはここからなんですね。綱を取ったからと安心していると、なんと、下から横からスポーン!と露骨に横取りされるんです!!

綱をキャッチできたお父さんは、離れて見ていた家族に向かってガッツポーズ!その隙にスポーンと下から横取り。「あ゛ーーーっっ!!」歓喜の歓声から、唖然呆然の叫びへ。子供が取ろうものなら、容赦なく周囲の大人達にむしりとられる。凄い・・凄すぎる。我家も最初に取った一本目は下から抜き去られましたよ。その後、無事2本目を取れたから良かったけれど・・。

「綱まき」教訓。綱を取ったら素早く群集から逃げ去るべし。

ちなみに、綱を横取りされたからといって誰も目くじらたてて怒ったりはしません。むしろみんな心底愉快そうにしている。そういう事もひっくるめて楽しむ、おおらかで可笑しくてエキサイティングな神事でした。

どうしても取れなかった人は、その場で相撲をとりあい勝者となればめでたく綱がいただけます。

 

バラバラにされたツツガムシは、のちに「大松明まるき直し」で再び大松明として蘇ります。

では、ここより2016年の松例祭に戻ります。

 

松聖の参籠場所「補屋」

こちらが松聖の参籠場所「補屋」です。補屋は左右対称二つに仕切られ、それぞれに先途方と位上方の松聖、そして手向地区の若者衆が詰めています。誰でも自由に出入りすることができます。(入館時は御神前で二礼二拍手一礼)

 

中に入ると丁度、神拝の真っ最中でした。

補屋では、ご祈祷や神事が行われる他に、寒さをしのげる場として見学者のありがた~い避難場所にもなってます。中はボンボン燃やされる焚き火の煙が充満し、衣類が強烈な燻製のような臭いになるのでご用心。火の粉も飛ぶので、ナイロン地のダウンなんかは場合によっては穴が開く危険も!?

 

補屋ではトンブリをまぶしたオニギリとお神酒のふるまいがあります。このオニギリがとても美味しいのです。

松例祭の主役、今年の松聖は・・・

 

先途方。

 

そして位上方です。

髭が凄いのは百日行の間は刃物を当てちゃいけないから。

引っ切り無しに御祈祷の依頼が来ていました。

 

19:00「綱さばき」

大松明を引く綱を巡って4っつ町の若者頭が話し合いをします。綱を取り付ける場所に優劣があるようで、より良い綱をゲットするための議論です。

 

議論はグルグルと何度も短く繰り返され、

 

御椀にたっぷりと注がれたお神酒を飲みます。

 

すぐ横では熱々に熱せられたお神酒が常にスタンバイ。

 

やがて酔いも回り、おかしなことになってきます。この様子がおもしろくて、みんな笑いっぱなし。議論そのものよりも酒飲み合戦の側面もあるようで。

 

20:30砂はき渡し~検綱行事~砂はき

ツツガムシ(大松明)を焼き払うための穴を掘る道具を、位上方、先途方それぞれが受け取ります。すでに大量の酒が入り血気盛んに叫びながら飛び跳ねる若者衆。そして、勢いよく補屋から出陣。(画像は2009年の様子)

2009年では、もう少し補屋で暖をとってから見学に向かおうなどと思っていたら松明を持たされて、皆と一緒に補屋から押し出されてしまった。

 

そしてツツガムシ(大松明)を焼き払う穴を決める検綱が厳かに行われます。これは羽黒の領土外でツツガムシを焼き払わなくてはならないので、その位置を調べる行事です。(画像は2009年の様子)

位置が決まると若者衆によって勢いよく穴が掘られ、雄たけびとともに再びダッシュで補屋へと駆け戻って行きます。この一連の若者衆による行事が早いのなんのって。ほんと、アッという間に終わっちゃいますよ。若いって素晴らしい。

 

21:30験競べリハーサル

験競べとは、カラス(羽黒権現の使者・太陽)となる山伏が6対6に分かれ跳ね競い、すべての山伏が跳ね終えると、次は兎(月山権現の使い・月)が登場しどちらの山伏がより優れていたか決めます。

判定がついたと同時に立春を告げる法螺貝が鳴らされ、それを合図に鏡池(羽黒の御神体)の向こう側でスタンバイしていた若者衆による威勢のいい大松明引きが始まります。

これぞ神から民衆へと神事が継がれる松例祭のクライマックス!

前回は験競べ本番を見学したので、今回はリハーサルだけ見学します。本当なら験競べ本番と大松明引きの両方とも見たいとこですが、時間的に被るのでそれは無理。前回見なかった大松明引きを今回はぜひ見ようと思います。

 

「験競べ」は三神合祭殿内で行われます。三神合祭殿へは「参集殿」(上の画像)の玄関から入ります。下駄箱は玄関を入って右手にあります。参集殿から三神合祭殿へは渡り廊下で繋がっています。参集殿には清潔で綺麗なトイレもあります。

三神合祭殿内は通常は撮影禁止ですが、内陣の扉が閉まっているこのリハーサルに限っては気兼ねなく堂々と撮影ができます。リハーサルでは写真撮影目当てのお客さんが大集結、本格的な三脚やカメラがズラーッと並んで圧巻です。験競べや兎の動きを指示する男性も最後にはみんなに向かって「どお?いいの撮れた?もう一回やろうか?」なぁんて言って笑いに包まれたり、終始和やかな雰囲気です。

ちなみに験競べ本番は独特のピンと張りつめた空気と、内陣の扉が開く畏敬の念から、とてもカメラを向けられる雰囲気じゃありませんでした。

そしてキープ場所ですが、前回は賽銭箱正面(内陣前)に座ったので、今回は人気の奥横にある撮影ポイントをキープしようと30分前に三神合祭殿へ行ったのですが、なんと早くも満員御礼!今年は人がとても多いです!仕方なく前回同様、賽銭箱前に座りました。賽銭箱前だと兎の神事は後ろ姿しか見えないんですよね。

この賽銭箱前付近は、本番では五番法螺を吹く山伏が走り抜ける通路になるため、せっかくキープしても移動させられる場合があるので、あまり座りたくないポジションです。

 

験競べはとにかく寒い

この「験競べ」を待つ間が本当に寒いのなんのって。冷たく寒い祭殿内でジッと座って待たなきゃならないので、足腰(特に足の先とお尻)がめちゃくちゃ冷えます。ここが一番の我慢どころかな。それを知ってか膝掛け持参の人もいました。

 

験競べ(リハーサル)スタート

さぁ験者の皆さんがやってきました。

 

この少し前に衝立の向こうから、まだ出番ではない兎がこちらを覗き込むようにピョコーンと顔を出しました。耳が長いぶん、とても目立つんですね。

前回は兎がシャーッと脛を滑らせて移動する際、摩擦でよほど痛かったのか、引っ込んだ後の衝立の奥から「あっつぅーっっ」と声が聞こえたり。なんとも人間臭い兎さんでした。

 

「烏とび」が始まりました。

 

羽黒権現の使者・太陽の化身のカラスである験者が「位上方」と「先途方」にわかれ鳥のように飛び跳ね競います。薄暗く動きも早いので、家のデジカメでは全然綺麗に撮れませーーん!他の皆さんは三脚使用の立派なカメラで撮影もバッチリな様子。

 

 
動画もどうぞ。例によって短い動画です。

 

全て飛び終えると、次は内陣に向かって験者が一列に並びクルクルと回転、同時に兎(月山権現の使い・月)がハイスピードで登場します。以前は脛でシャーッと滑って登場していた兎が、今回はピョンピョンと飛び跳ねる仕草で登場。数年の間に更に兎化が進んでいました!(さすがに脛滑りは摩擦で痛いからやめたのかな?)

 

験者につかまってガックリするウサギ・・・ではありません、くれぐれも。

 

兎は「位上方」と「先途方」どちらの験者が優れているか、机の上に手を乗せて示します。本番では五番目が終わると山伏が駆け抜け、鏡池の向こうの民衆に向かい法螺貝を吹くのですが、リハーサルではそれは省略されます。そのかわり写真撮影用のサービスなのか「鳥とび」をもう一回やってくれました。

 

験競べリハーサルを見終えたら、鏡池の向こうにある大松明引き会場へ急いで向かいます。到着すると、なんと良い見学ポイントは全て埋まってました!みんな行動が早ーーーい。

ちなみにこの験競べ終了時に2009年でちょっとした事件が起きました。なんと私の長靴を誰かが履いていっちゃったんです!車に予備のスニーカーがあったからよかったものの、もしなかったら「補屋」の藁草履を借りるしかなかったかも・・・。

 

22:50松例祭のクライマックス「大松明引き」が始まります

大松明引きは松例祭のクライマックスで、「験競べ」の終了と共に鳴らされる法螺貝(五番法螺)の音を合図に、若者衆が大きな松明(ツツガムシを模った藁みたいの)を羽黒の領土外まで引きずり出し、そして焼き払う迫力の神事です。松例祭が「火祭り」と呼ばれるのもこの大松明引きがあるからなんだと思います。

 

火がつく前の静かに眠る大松明。

ツツガムシ(悪)を模った大松明は、まず切り刻まれ、そして再び巻きなおされ(復活)、そして最後は焼き払われる・・ツツガムシも楽じゃないよ。でも山に入るとやっぱり一番怖いのは、知らず知らずのうちに皮膚に喰らいつき、高熱を発症、時に死に至るダニ(ツツガムシ)なので、昔の人はその事をよく知っていたんだなぁーと思います。最近ようやくダニの恐ろしさが世間に認知されてきました。

また、「験競べ」の決着を知らせる五番法螺は立春の到来を意味するので、新春を迎えると同時に悪の象徴ツツガムシを追い出し焼き払い、そしてケガレのない清らかな歳を迎える・・そういう神事なのかな、と私は解釈しています。

 

只今「大松明引き」のスタンバイ中・・・。開始の合図を知らせる法螺の音を、いまかいまかと待っています。

位上方と先途方それぞれの大松明を若者衆が取り囲み「法螺はまだかー!」「早く法螺鳴らせぇ!」と、酒も入りかなり興奮状態。

この日は「験競べ」の終了がやや遅れているようで、現場警備の人も「もう時間なんだけどなぁ」と腕時計を何度も確認。

 

すると唐突にぷぉ~っぷぉ~っっ!五番法螺が一瞬の静寂の中、鳴り響きました!

 

法螺貝の音と共に「うぉりゃゃゃーーーっ!」と大松明を引きずり焼き捨て、

 

そのまま燃え盛る大松明に背を向け、引き綱を持ったまま補屋へ猛ダッシュ。この時、若者衆は後ろを振り返っちゃいけないそうです。

五番法螺が鳴ってから大松明が焼き捨てられるまで、ホントにアッという間でした。

 

後に残ったツツガムシ(大松明)の残骸が赤々と炎をあげます。この時、早く勢いよく燃えあがったのが「位上方」か「先途方」によって、今年は豊作か豊漁かが決まるそうです。私には同じに見えたので、今年は豊作で豊漁間違いなし。

 

火の粉を巻き上げながらグジャと焼け崩れます。ツツガムシ(厄)の終焉です。

この後、新年と同時に「国分け神事」と「火の打替え神事」が行われます。

 

補屋へ行くと、火の打替え神事で新しい年の火を出す役目の火の精「松打」が登場していました。

 

なかなかの個性です。
 

松打がカチィーンカチィーンと火打ち石を鳴らしていたのですが、

 

ボン!という音と共に想像以上の発煙があり、火の精が「おっ!」とビックリ。それを見ていた験者さんは思わずニヤリ。

 

2017年新年あけましておめでとうございます

なんと補屋から「国分け神事」の会場へ歩いている途中で新年を迎えてしまいました。

 

「国分け神事」です。羽黒の領土を確認し、この後、火の精によって新しい火が切り出される神事に続くのですが、またもや、この時点で眠くて眠くてギブアップ。なんと前回もここで眠気に負けてギブアップでした。

 

それにしても、こんな穏やかな天候だからか、数年前に国の重要無形民俗文化財に登録されたためか「いつの間に、こんなに人が集まっていたの!?」と驚くほどに凄い見学者の数になっていました。前回とは比べ物にならないくらいの人だかりです。

 

2009年はこんな感じでした。天気が荒れて強風と雪が強かったっていうのも見学者が少なかった原因だったかもしれません。

駐車場へ戻るとツアーの大型バスがたくさん、そして空きを待つ一般参拝者の車の列も凄い事になっていました。

大賑わいの羽黒山を後に「道の駅庄内みかわ」に到着したのは午前2時。夜明けを待って仮眠します。こんな日にわびしく車中泊する人なんているのかな?なんて思っていましたが、他にも数台チラホラと。おそらくみんな松例祭組でしょう。

 

6:00には一番風呂目指して「やまぶし温泉ゆぽか」へ移動。ところが松例祭の余波なのか、男湯が驚くほどの大混雑!(女湯はそうでもなかった)広い内湯浴槽が足をのばせないほど満員御礼、カランにいたっては20人待ちの行列だったそうで!オトコ20人が素っ裸で静かに並ぶ元日の朝・・・。これもまた羽黒の麓の地ならではの光景なんでしょうか。

さて、なぜ朝湯に「ゆぽか」を選んだかといいますと・・・元日から500円(税込)朝食バイキングをやっている事!車中泊の強い味方で、もう何度も利用してますよ~。

2016年も満足度の高い松例祭でした!また来たい!2回とも年明けと共に疲労と眠気に負けたので、次は「験競べ」あたりから見学に行こうかな。

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